悪女の代行を演じたら氷の御曹司に永久就職⁉〜お見合い破談に大失敗!私は彼に丸め込まれ溺愛されてます~
「栗原さん、凄い‼もう私なんて震えちゃって」

半泣きの宮永さんは私の両手を掴んでブンブンと上下にさせる。
手はまだ震えてるから彼女もまだ怖いんだと思うけど頑張って貰うしかない。

「あと少し!一緒に頑張ろうね」

彼女の肩をポンと軽く叩きまだ混乱中のロビーに向かった。


台風の勢力は夜になっても衰えるどころかますます猛烈な暴風雨となって交通機関は完全に麻痺してタクシーすら一切繋がらない状態。

「これで今日の分の引継ぎは以上です。気をつけてお仕事お願いします」

21時に業務を終え当直勤務に引き継ぎをして私は従業員用の裏口で凄まじい嵐の音を聞きながらビニール傘をぎゅっと握り締めていた。

なんとかして帰りたい。
明日は休みだけど疲れた身体を温かいお風呂で休ませて家にある物でご飯を作ってお気に入りのドラマを見ながらお酒を飲みたい!

「でも電車は動かないしタクシーも無理だよね」

アパートまで歩いたら2時間はかかる。
でも、このまま職場に居ても疲れるし万が一社長に会うことの方が怖い。

「行きますか…」

温かい我が家へ覚悟を決めて従業員用裏口の重い扉を押し開け外へと足を踏み出した。

バキッ!

「えっ‼」

一歩外へ出ると猛烈な風が襲い鈍い音と共に手に持っていたビニール傘は一瞬で大破して遮る物のない状況なのに激しい雨が身体を容赦なく叩きつける。

「ちょっと、もう無理じゃん」

わずか数秒で髪も安物のワンピースの私服も完全にずぶ濡れ。

「うそ…っ、冷たっ、寒っ」

容赦ない雨が体温を奪ってガタガタ震えてくる。

これ止まると死ねる!
絶対に風邪ひく!
暗いし雨で前も見えないけど足を止めるわけには行かない。

ーキィーッ‼

「え…?」

生きる為に歩き出そうとするとブレーキ音が響き車のライトが私を照らし目の前に停まったのは黒の高級車で呆然とする私の前で後部座席のドアが開いた。

そんな、まさかね?
そんなわけない!

ライトのせいで降りてきた人物の表情は分からないけど従業員用の地下駐車場から出て来る高級車に乗れる人なんて限られてる。
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