悪女の代行を演じたら氷の御曹司に永久就職⁉〜お見合い破談に大失敗!私は彼に丸め込まれ溺愛されてます~
「社長」

「どうした?」

いつもは大人しく引き下がる私の低い声のトーンにやっと手を止めたのを合図にツカツカと奥まで入り彼の座る席の隣に立った。

「日和、何か怒ってる?」

下からのぞき込むとか反則!
身長差を考えるといつも私が見上げるシチュエーションしか無かったからドキドキしちゃうじゃん!
イケメンの自然な上目遣いとかヤバい。

でもダメ‼

「パソコン、閉じてください。これ以上は社長命令でも言うことは聞きません」

私はトレイをデスクの端に置くといつもの真面目な栗原ではなくただ一人の女として呟いた。

「日和?」

「今、お腹に優しいものを作ってきます。それを食べたら今日は寝てもらいますからね」

私は彼の反論を許さないほどの強い視線を向けるとモコモコのルームウェアの袖をまくり上げ足早にキッチンへと向かった。

まだ一族の本格的な権力争いの火蓋は切られていない。
だけど彼が次期トップとしての地位を盤石にする為に頑張ってる。
そして将来的に必ず仕掛けてくるはずの裏切りを未然に防ぐための調査は彼の睡眠時間と体力を確実に削り取っている。

私には分からない。
そんなに彼が権力に執着してるように思えない。
どちらかと言えば…

「田舎でカフェとか開いて、窓辺で本を読んでそう」

「いいね、そう言う生活、理想だな」

上質の白いYシャツを腕まくりして彼は書斎から出て来た。
ボタンを2つほど外しリラックスした服装ではあるけど顔が疲れてる。

しかし…いくら見てても慣れないこともある!
腕まくりした腕の血管がいくら中世的な顔でも男を感じさせ顔に熱がこもってくる。

「気が散ります!座ってて下さい」

赤くなる顔を見られたくなくてワザとプンスカと怒る振りして広々としたアイランドキッチンに背を向け業務用の冷蔵庫を開けた。

「凄い」

うんうん、中々の品揃え。
いつも料理も掃除も洗濯もお昼に逢坂家の家政婦さんがやってくれてる。
だから私が何かを彼にして上げたことはない。
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