悪女の代行を演じたら氷の御曹司に永久就職⁉〜お見合い破談に大失敗!私は彼に丸め込まれ溺愛されてます~
その時の日和の脳内では、

(このおじいさん言うことが志遠さんに似てる!粘度にペンの摩擦って面白い人)

”妥協は一切存在しない”と厳しい志遠のことが頭をかすめてた。

彼の近くにいる日和にとってこの程度のこだわりは日常茶飯事でこんな人を面白いで片づけられるほどのドンとした性格なのを祖父はまだ知らない。

「かしこまりました。お客様のお手に馴染む物をご用意できなかったこと深くお詫び申し上げます。少々、私にお時間を頂けますでしょうか」

日和はホテルのプロとしての意地が笑顔を浮かべさせた。
バックヤードへ下がり自分の私物としてキープしていたボールペンを引っ張り出しカウンターの上の硬いデスクマットを避け適度な弾力のあるレザーの下敷きをサッと用意した。

「お待たせいたしました。こちらのペンと下敷きをお試しください」

差し出されたペンを無言で手に取りメモ帳に滑らせると驚くほど軽い力でサラサラと美しい線が描かれ完璧な書き味に文句の付け所がない。
日和の顔を見るとその表情には「どうだ!」と言わんばかりでどこか楽しげに見える。

「他にも何かご用意致しましょうか?」

なるほど、ただ怯えて耐えるだけのタマではないな。
この折れない芯の強さとタフさは志遠のあのひねくれた性格を受け流せるには確かにこの娘しかおらん。

「はは、中々良い性格しておるな」

「ふふ、お褒めの言葉をいただき光栄です」

そうか、志遠は見つけたのか自分にとって温かい場所を。
それにこの娘は死んだばあさんに性格が似てるような気がする。
あれもいつもはのんびりしてたがドンと腰が据わった女だった。

(この小娘に志遠を託すのも面白いかもしれん!)

「おじいさん…?」

「わしの昔話を少し聞いてくれるか?」

ふっと視線を落とし手元のペンを見つめぽつりと呟いた。
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