桜の下にて君を待つ。
私は桜。
桜の木としてずっと、ずっと過ごすだけの木。
私が生まれたのは随分昔の事で、私から見える景色は随分と変わった。
昔は緑が多かったこの街も、最近は家が建ち、喧騒が増え、空気は汚れ、緑は減っていった。

その中でも私はここにずっと鎮座し続けて。
どこにも動けず、ただ変わりゆく時代と景色をぼんやりと眺めているだけの存在。

人も通らないこの場所で、毎年桜を咲かせ、散らすを繰り返す。
そんな毎年を過ごしていた私が、私が…

桜を咲かせるのを楽しみにしてしまった。

彼はいつからか桜の季節になると私の元へやってきた。
名など知らず。ただ私の根元に腰掛けて本を読んでいる。そしてしばらくするとどこかへ行ってしまうのだ。

今年ももうすぐ桜が咲く。
彼は来るだろうか?
それともこんな田舎に嫌気がさして出て行ってしまっただろうか。

早く咲け…。
こればっかりは私の力ではどうにもできない。
祈りながら私は夜桜となり、眠りにつく。
目が覚めた時、桜が咲くことを祈りながら。



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