銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした

リスタートの馬場

記憶を整理して分かったことは、絶望的な状況と、奇妙な高揚感だった。
私が転生したのは、流行りの乙女小説『光の聖女と誓いの騎士』の世界。そして私の名は、エリーゼ・フォン・ヴァルハイト。ヒロインをいじめ抜き、最終的には国外追放か処刑される典型的な悪役令嬢だ。
状況を分析すると、以下の通り。
1. 現在の状況:婚約者である第一王子・ジュリアンと乗馬中に落馬し、数日間生死をさまよっていた(今ここ)
2. 原作のシナリオ:この落馬をきっかけに、ジュリアン王子が「なんて我が儘で乗馬の才能もない女だ」と呆れ、偶然出会った庶民出身の癒やしの聖女(ヒロイン)に心を移す。それに嫉妬したエリーゼが嫌がらせを始め、破滅へ突き進む。
3. 実家の環境:ヴァルハイト公爵家は厳格そのもの。母は他界、父と兄は優秀なエリーゼにしか興味がなく、今回の落馬で「公爵家の泥を塗った出来損ない」として、すでに完全に見限られている(見舞いすら来ない)
「……最高じゃない」
ベッドの上で、私はふっと笑みを漏らした。
前世では歩くことすらままならなかった私が、今は健康な(打撲はあるけれど)身体を持っている。深呼吸をすれば、胸いっぱいに空気が吸える。
婚約者のジュリアン王子? 原作では絶世の美男子と書かれていたけれど、エリーゼとしての記憶にある彼の顔を思い出しても、これっぽちもときめかない。
そもそも、婚約者がいながら他の女にフラフラとして、鼻の下を伸ばすような男、前世の価値観から言わせてもらえば「一発アウト、論外」だ。
「誰がそんな男のために嫉妬して、いじめなんて不毛なことするもんですか」
今回の事故で家族から見向きもされていない。
まぁ、はなから期待はされてない「駒」だろう。
ならば、これ幸い。
ストーリーがどの段階まで進んでいるか正確には分からないけれど、ジュリアン王子がヒロインに熱を上げ、私に「婚約破棄」を突きつけてくるのは時間の問題だろう。
「向こうから破棄してくれるなら万々歳。されなくても、こっちから有罪放免を勝ち取って、隙を見てこの家から逃げ出そう。そして、前世でできなかった『自由な旅』をするのよ!」
目標は決まった。
悪役令嬢エリーゼの、お気楽な逃亡計画の始まりだった。
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