銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした
【エリーゼ視点】
夕暮れ時、私たちは四人で咆哮の森の入り口へと向かった。
私は背中にアルスを、レオンがルカを抱き、獣人たちが「銀狼様のお散歩だ!」と道を開けてくれる。
私の前世の人生は、死に怯え、病に縛られ、ただ静かに消えていくものだった。
でも今の私は、自分の意志で、愛する人たちと共に生きている。
「見て、レオン! あそこに青い花が咲いているわ! 『月光の雫』の変異種よ!」
私はアルスを背負ったまま、軽やかに小走りで駆け寄った。
かつては病気で、一歩歩くのさえ辛かったこの身体。でも、今の私は、レオンの愛とこの環境のおかげで、信じられないほど力強く、そして健やかだ。
「エリーゼ、無理はするな。だが……お前が楽しそうにしているのを見るのが、俺は一番嬉しい」
レオンがルカを片手で抱えたまま、私の腰をそっと支えてくれる。
なんてことのない日常。でも、私にとっては、この一瞬一瞬が、天にも昇るような幸福の積み重ねだった。
「レオン、大好き」
「俺もだ。……愛している、エリーゼ。そして、俺たちの愛しい家族たちよ」
太陽が沈み、ガルハラの空が深い蒼に染まり始める。
私たちの物語は、これからも家族四人、手を取り合って続いていく。
どんな困難があったとしても、この絆があれば、どんなことだって全力で楽しめる。そう確信しながら、私は愛する夫の腕の中で、幸せを噛み締めていた。
「ふえぇぇぇん! あう、ううっ……!」
ガルハラの夜は冷え込む。その静寂を切り裂いて、アルスとルカの泣き声が同時に響き渡った。
私は慌てて起き上がり、隣で安眠を妨げられて身じろぎしたレオンをそっと手で押さえる。
「……ん、エリーゼ、俺が……」
「いいえ、レオンは寝ていて。今日は長時間の巡回で疲れているでしょう? 私がやるわ」
私は自分の疲れなど忘れ、まずはアルスを抱き上げ、続いてルカを隣に引き寄せた。
母になるということは、ただ可愛いだけでは済まない。自分の時間をすべて捧げ、相手の命を自分の呼吸のように大切にすること。前世では決して味わうことのなかった、この張り詰めたような、けれど温かい責務。
私の腕の中で、泣きじゃくる二つの小さな命。
どちらも、私の愛するレオンの面影を宿している。
「よしよし、いい子ね……。お母さんがここにいるわよ」
聖属性の魔力を微かに指先から流し込み、彼らの不安を少しでも取り除けるように優しく背中を撫でる。
夜泣きが酷い夜は、正直言って寝不足でふらつく。頭は重いし、身体も痛む。けれど、私の腕の中で彼らが少しずつ泣き止み、私の胸の鼓動を聞いて安らぎを取り戻していくその瞬間、心臓の奥が震えるほどの愛おしさが込み上げてくるのだ。
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