銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした
【レオン視点】
「ただいま戻った」
森の巡回を終え、隠れ家の扉を押し開くと、そこには普段と少し違う空気が流れていた。
いつもなら俺の足元に駆け寄ってくるはずのアルスとルカの姿が見えない。代わりに、部屋の隅でエリーゼが、何かを隠すようにして屈み込んでいる。
「おかえりなさい、レオン。……今日は、少しばかり特別な帰宅になるわよ」
エリーゼはニヤリといたずらっぽく笑うと、背後にいた二人を前に押し出した。
「おとーしゃん! おかえりっ!」
「おとーしゃん、あーそぼ!」
アルスとルカが勢いよく俺に飛びついてくる。俺は屈んで二人を片手ずつで受け止めた。すると、二人は示し合わせたかのように、背中に隠し持っていた羊皮紙を俺の目の前に突き出した。
「これね、おとーしゃんにね、プレゼント!」
「おかーしゃんとね、がんばってかいたの! おとーしゃんの、え!」
第一〇〇章:銀狼の涙、世界一の宝物(レオン視点)
突き出された羊皮紙には、ベリーの果汁が飛び散り、歪な線が複雑に重なり合っていた。
一見すればただの赤い染みだ。だが、俺の獣としての直感と、父親としての眼差しが、その中に描かれたものを瞬時に理解する。
中央に、大きく堂々と立つ剣を持った男。その横に寄り添う、優しげな母親。そして、二人の銀狼たち。
拙い筆致の中に、俺を「かっこいい」「強い」と慕う、彼らの純粋な敬意と愛情が、これでもかとばかりに詰め込まれていた。
「……っ」
喉の奥が熱くなる。
戦場で数多の敵と対峙し、生き残るためだけに剣を振るっていた頃の俺に、こんな日が来るなんて想像もできなかった。
俺は言葉を失い、ただ二人の小さな騎士を見つめた。
「どう……? おとーしゃん、すき?」
ルカが不安げに語尾を間延びさせて俺の顔を覗き込む。アルスもまた、耳を垂らして俺の反応を待っている。
「……最高だ」
俺は低い声でそう絞り出すと、二人を抱きしめ、羊皮紙を慎重に受け取った。
「誰よりも強い。……俺が見た中で、一番強くてかっこいい俺が、ここに描かれている」
第一〇一章:家族の輪、永遠の誓い(レオン視点)
「本当? おとーしゃん、よろこんでくれた?」
「ああ。宝物だ。……一生、俺の私室に飾らせてもらう」
俺がそう言うと、二人は顔を見合わせて「えへへぇ〜」と嬉しそうに笑った。
エリーゼがその様子を、優しく微笑みながら見守っている。彼女の横顔を見た瞬間、俺の胸に溢れんばかりの幸福感が押し寄せた。
「……エリーゼ、お前も手伝ってくれたのか」
「ええ。二人とも、レオンを驚かせたくて必死だったのよ。私も、あの子たちの『大好き』を形にする手伝いができて嬉しかったわ」
俺は羊皮紙を大切に懐に収めると、エリーゼの手を取り、双子を抱きかかえて部屋の中央へと歩いた。
この隠れ家には、俺の誇りがある。
俺を信じて待っていてくれる家族がいる。
あの粗末な羊皮紙に描かれた四人の姿は、俺がこれから守り、何のために生きていくのかを指し示す、何よりの証明書だった。
「さあ、晩餐にしよう。今日は、俺たちの新しい門出を祝う宴だ」
俺の家族の歴史は、こうして小さな手で描かれた一枚の絵から、また新しい章へと歩み出した。
俺は確信している。この絵が色褪せる頃には、あの子たちはもっと強く、もっと立派な銀狼になっているはずだと。
そして俺は、その成長を、エリーゼと共に永遠に見守り続けるのだ。
「ただいま戻った」
森の巡回を終え、隠れ家の扉を押し開くと、そこには普段と少し違う空気が流れていた。
いつもなら俺の足元に駆け寄ってくるはずのアルスとルカの姿が見えない。代わりに、部屋の隅でエリーゼが、何かを隠すようにして屈み込んでいる。
「おかえりなさい、レオン。……今日は、少しばかり特別な帰宅になるわよ」
エリーゼはニヤリといたずらっぽく笑うと、背後にいた二人を前に押し出した。
「おとーしゃん! おかえりっ!」
「おとーしゃん、あーそぼ!」
アルスとルカが勢いよく俺に飛びついてくる。俺は屈んで二人を片手ずつで受け止めた。すると、二人は示し合わせたかのように、背中に隠し持っていた羊皮紙を俺の目の前に突き出した。
「これね、おとーしゃんにね、プレゼント!」
「おかーしゃんとね、がんばってかいたの! おとーしゃんの、え!」
第一〇〇章:銀狼の涙、世界一の宝物(レオン視点)
突き出された羊皮紙には、ベリーの果汁が飛び散り、歪な線が複雑に重なり合っていた。
一見すればただの赤い染みだ。だが、俺の獣としての直感と、父親としての眼差しが、その中に描かれたものを瞬時に理解する。
中央に、大きく堂々と立つ剣を持った男。その横に寄り添う、優しげな母親。そして、二人の銀狼たち。
拙い筆致の中に、俺を「かっこいい」「強い」と慕う、彼らの純粋な敬意と愛情が、これでもかとばかりに詰め込まれていた。
「……っ」
喉の奥が熱くなる。
戦場で数多の敵と対峙し、生き残るためだけに剣を振るっていた頃の俺に、こんな日が来るなんて想像もできなかった。
俺は言葉を失い、ただ二人の小さな騎士を見つめた。
「どう……? おとーしゃん、すき?」
ルカが不安げに語尾を間延びさせて俺の顔を覗き込む。アルスもまた、耳を垂らして俺の反応を待っている。
「……最高だ」
俺は低い声でそう絞り出すと、二人を抱きしめ、羊皮紙を慎重に受け取った。
「誰よりも強い。……俺が見た中で、一番強くてかっこいい俺が、ここに描かれている」
第一〇一章:家族の輪、永遠の誓い(レオン視点)
「本当? おとーしゃん、よろこんでくれた?」
「ああ。宝物だ。……一生、俺の私室に飾らせてもらう」
俺がそう言うと、二人は顔を見合わせて「えへへぇ〜」と嬉しそうに笑った。
エリーゼがその様子を、優しく微笑みながら見守っている。彼女の横顔を見た瞬間、俺の胸に溢れんばかりの幸福感が押し寄せた。
「……エリーゼ、お前も手伝ってくれたのか」
「ええ。二人とも、レオンを驚かせたくて必死だったのよ。私も、あの子たちの『大好き』を形にする手伝いができて嬉しかったわ」
俺は羊皮紙を大切に懐に収めると、エリーゼの手を取り、双子を抱きかかえて部屋の中央へと歩いた。
この隠れ家には、俺の誇りがある。
俺を信じて待っていてくれる家族がいる。
あの粗末な羊皮紙に描かれた四人の姿は、俺がこれから守り、何のために生きていくのかを指し示す、何よりの証明書だった。
「さあ、晩餐にしよう。今日は、俺たちの新しい門出を祝う宴だ」
俺の家族の歴史は、こうして小さな手で描かれた一枚の絵から、また新しい章へと歩み出した。
俺は確信している。この絵が色褪せる頃には、あの子たちはもっと強く、もっと立派な銀狼になっているはずだと。
そして俺は、その成長を、エリーゼと共に永遠に見守り続けるのだ。


