凍てついた令嬢は、異国の太陽に抱かれる
第五十話:初めての「我が儘」と、溺愛の領分(エルサ・ゼオン・カイル視点)
【エルサ視点】不均衡な方程式
お茶会が終わり、ゼオン様の私室へと戻ってきた後も、私の胸の奥に宿った温もりは消えることがありませんでした。
国王陛下と王妃殿下が、私に何も要求せず、ただ「親バカ」としてそこにいてくださったこと。それが、前世と今世を通じて一度も愛された記憶のない私の壊れた数式を、今も心地よく狂わせ続けています。
「どうした、エルサ。まだ、父上たちの言葉が信じられないか?」
ゼオン様が私の後ろから長い腕を回し、私の身体をすっぽりとその大きな胸の中に閉じ込めました。耳元に触れる彼の低い声と、首筋に押し当てられる熱い唇の感触に、私の思考回路はまたしても処理速度を低下させていきます。
「……信じられない、というよりは。因数分解ができないのです。私は今まで、何かを『与えられる』ためには、それ以上の『成果(コスト)』を支払わねばならない世界で生きてきました。なのに……ここでは、ただ生きているだけで、溢れるほどの愛が支払われる。これでは、私の人生の方程式が、完全に不均衡になってしまいます」
私の大人の理性が、なおも健気に「正論」を組み立てようと抵抗します。しかし、ゼオン様の腕の力は、それを嘲笑うかのように強くなっていきました。
「お前は本当に、往期が悪いな」
ゼオン様は私の身体をくるりと反転させ、ソファーへと押し倒すようにして私を見下ろしました。その紺色の瞳には、私を片時も離したくないという、重く、粘ついた執着の炎が揺らめいています。
「方程式など、最初から壊してあると言ったはずだ。エルサ。お前がその頭脳でいくら計算しようと、俺たちの愛はお前の想定を遥かに超える。……まだ信じられないと言うなら、今度はどんな『我が儘』を言えば、自分が許されるのかを試してみるがいい」
「我が儘、ですか……?」
「ああ。どんな理不尽な要求でもいい。お前が自分の口から『これが欲しい』と言った瞬間、この国は総力を挙げてそれを叶える。それが、お前の言う『不均衡』を埋めるための、俺たちの解答(こたえ)だ」
ゼオン様の指先が、私の髪を優しく梳き上げていきます。
愛されたことがないから、おねだりの仕方も分からない。そんな私の、凍てついたままの純白の蕾に、彼はどこまでも辛抱強く、圧倒的な熱量を注ぎ込み続けてくれるのです。
私は、彼の衣の胸元をぎゅっと掴み、潤んだ瞳で彼をじっと見つめました。
「……では、その。今日の夜は、お仕事に行かないで……ずっと、私と一緒にいてくださいますか……っ? 私の、お話を……聞いて、欲しいのです……」
前世の二十五年、今世の十数年。一度も親にすら言えなかった、少女としての初めての、本当の「我が儘」。
その言葉を口にした瞬間、私の顔は林檎のように真っ赤に染まっていました。
【ゼオン視点】理性の完全な臨界点(メルトダウン)
「ーーっ」
エルサの口から紡ぎ出された、消え入りそうな、けれど紛れもない「俺への執着(おねだり)」。
その瞬間、俺の頭の中で何かが完全に弾け飛んだ。
誰にも愛されず顧みられずに磨り潰されてきたあの至宝が、今、俺の胸元を小さな手で必死に掴みながら、涙目で「夜、ずっと一緒にいてほしい」と強請(ねだ)ってきたのだ。
(おい、本当に勘弁しろ……。これ以上俺を狂わせるな……っ!)
胸の奥から湧き上がる、狂おしいほどの愛おしさと、すべてを喰らい尽くしたいという獰猛な独占欲。
この真っ白で無垢な少女の「初めて」を、今、俺が完全に独占している。その男としての極上の快感と支配感が、俺の理性を完全に消し飛ばしていく。
「行くわけがないだろう。今夜どころか、生涯、お前が嫌だと言っても俺はお前の傍を離れない」
俺はエルサの細い手首をソファーに押しピンで留めるように固定し、その真っ赤になった唇へ、飢えた獣のように深く、深く喰らいついた。
「ん、ぅ……っ!?」
驚きに揺れる琥珀色の瞳。何度も、何度も、彼女の口内の柔らかさを貪り、俺の絶対的な熱量(たいおん)で彼女の思考を完全にフリーズさせていく。
義務でも、役割でもない。お前という存在そのものを、魂の底から欲しているという、剥き出しの執着。それを彼女の真っ白な心へと、これでもかと刻み込んでやった。
「は、ぁ……、ゼオン、様……っ」
唇を離すと、エルサはトロンと潤んだ目で俺を見上げ、完全にキャパシティオーバーを起こして身を委ねてきた。その健気で、反則的なまでに可愛い姿に、俺はただただ、深い勝利の余韻に浸るのだった。
【カイル視点】過保護な包囲網の、完全なる完成
「……やれやれ。今夜の分の殿下の決裁書類は、すべて私が処理することになりそうですね」
私室の扉の外で、私は眼鏡の位置を静かに直しながら、手元のスケジュール帳に大きな×印を書き込んでいました。
部屋の奥から微かに聞こえてくる、エルサ様の可愛らしい抗議の声と、殿下のどこまでも甘く重い笑い声。
前世でのネグレクト、今世での冷酷な搾取。誰にも顧みられず、愛を知らずに生きてきた真っ白な少女が、今、ついに「夜、一緒にいてほしい」という、至高の我が儘を口にされた。
その一歩が、どれほど尊く、どれほど私たちの包囲網を狂喜乱舞させたことか。
愛されなかった至宝の頁は、今、私たちの過剰なまでの溺愛という色彩によって、完全に上書きされ、満たされようとしています。
彼女がどんな我が儘を言おうとも、私たちはそれを「至上の正解」として全て叶えてみせる。ガルディニアが誇る幸福の檻は、今夜もまた、世界で一番甘やかに、その絶対の理を確立していくのです。
【エルサ視点】不均衡な方程式
お茶会が終わり、ゼオン様の私室へと戻ってきた後も、私の胸の奥に宿った温もりは消えることがありませんでした。
国王陛下と王妃殿下が、私に何も要求せず、ただ「親バカ」としてそこにいてくださったこと。それが、前世と今世を通じて一度も愛された記憶のない私の壊れた数式を、今も心地よく狂わせ続けています。
「どうした、エルサ。まだ、父上たちの言葉が信じられないか?」
ゼオン様が私の後ろから長い腕を回し、私の身体をすっぽりとその大きな胸の中に閉じ込めました。耳元に触れる彼の低い声と、首筋に押し当てられる熱い唇の感触に、私の思考回路はまたしても処理速度を低下させていきます。
「……信じられない、というよりは。因数分解ができないのです。私は今まで、何かを『与えられる』ためには、それ以上の『成果(コスト)』を支払わねばならない世界で生きてきました。なのに……ここでは、ただ生きているだけで、溢れるほどの愛が支払われる。これでは、私の人生の方程式が、完全に不均衡になってしまいます」
私の大人の理性が、なおも健気に「正論」を組み立てようと抵抗します。しかし、ゼオン様の腕の力は、それを嘲笑うかのように強くなっていきました。
「お前は本当に、往期が悪いな」
ゼオン様は私の身体をくるりと反転させ、ソファーへと押し倒すようにして私を見下ろしました。その紺色の瞳には、私を片時も離したくないという、重く、粘ついた執着の炎が揺らめいています。
「方程式など、最初から壊してあると言ったはずだ。エルサ。お前がその頭脳でいくら計算しようと、俺たちの愛はお前の想定を遥かに超える。……まだ信じられないと言うなら、今度はどんな『我が儘』を言えば、自分が許されるのかを試してみるがいい」
「我が儘、ですか……?」
「ああ。どんな理不尽な要求でもいい。お前が自分の口から『これが欲しい』と言った瞬間、この国は総力を挙げてそれを叶える。それが、お前の言う『不均衡』を埋めるための、俺たちの解答(こたえ)だ」
ゼオン様の指先が、私の髪を優しく梳き上げていきます。
愛されたことがないから、おねだりの仕方も分からない。そんな私の、凍てついたままの純白の蕾に、彼はどこまでも辛抱強く、圧倒的な熱量を注ぎ込み続けてくれるのです。
私は、彼の衣の胸元をぎゅっと掴み、潤んだ瞳で彼をじっと見つめました。
「……では、その。今日の夜は、お仕事に行かないで……ずっと、私と一緒にいてくださいますか……っ? 私の、お話を……聞いて、欲しいのです……」
前世の二十五年、今世の十数年。一度も親にすら言えなかった、少女としての初めての、本当の「我が儘」。
その言葉を口にした瞬間、私の顔は林檎のように真っ赤に染まっていました。
【ゼオン視点】理性の完全な臨界点(メルトダウン)
「ーーっ」
エルサの口から紡ぎ出された、消え入りそうな、けれど紛れもない「俺への執着(おねだり)」。
その瞬間、俺の頭の中で何かが完全に弾け飛んだ。
誰にも愛されず顧みられずに磨り潰されてきたあの至宝が、今、俺の胸元を小さな手で必死に掴みながら、涙目で「夜、ずっと一緒にいてほしい」と強請(ねだ)ってきたのだ。
(おい、本当に勘弁しろ……。これ以上俺を狂わせるな……っ!)
胸の奥から湧き上がる、狂おしいほどの愛おしさと、すべてを喰らい尽くしたいという獰猛な独占欲。
この真っ白で無垢な少女の「初めて」を、今、俺が完全に独占している。その男としての極上の快感と支配感が、俺の理性を完全に消し飛ばしていく。
「行くわけがないだろう。今夜どころか、生涯、お前が嫌だと言っても俺はお前の傍を離れない」
俺はエルサの細い手首をソファーに押しピンで留めるように固定し、その真っ赤になった唇へ、飢えた獣のように深く、深く喰らいついた。
「ん、ぅ……っ!?」
驚きに揺れる琥珀色の瞳。何度も、何度も、彼女の口内の柔らかさを貪り、俺の絶対的な熱量(たいおん)で彼女の思考を完全にフリーズさせていく。
義務でも、役割でもない。お前という存在そのものを、魂の底から欲しているという、剥き出しの執着。それを彼女の真っ白な心へと、これでもかと刻み込んでやった。
「は、ぁ……、ゼオン、様……っ」
唇を離すと、エルサはトロンと潤んだ目で俺を見上げ、完全にキャパシティオーバーを起こして身を委ねてきた。その健気で、反則的なまでに可愛い姿に、俺はただただ、深い勝利の余韻に浸るのだった。
【カイル視点】過保護な包囲網の、完全なる完成
「……やれやれ。今夜の分の殿下の決裁書類は、すべて私が処理することになりそうですね」
私室の扉の外で、私は眼鏡の位置を静かに直しながら、手元のスケジュール帳に大きな×印を書き込んでいました。
部屋の奥から微かに聞こえてくる、エルサ様の可愛らしい抗議の声と、殿下のどこまでも甘く重い笑い声。
前世でのネグレクト、今世での冷酷な搾取。誰にも顧みられず、愛を知らずに生きてきた真っ白な少女が、今、ついに「夜、一緒にいてほしい」という、至高の我が儘を口にされた。
その一歩が、どれほど尊く、どれほど私たちの包囲網を狂喜乱舞させたことか。
愛されなかった至宝の頁は、今、私たちの過剰なまでの溺愛という色彩によって、完全に上書きされ、満たされようとしています。
彼女がどんな我が儘を言おうとも、私たちはそれを「至上の正解」として全て叶えてみせる。ガルディニアが誇る幸福の檻は、今夜もまた、世界で一番甘やかに、その絶対の理を確立していくのです。