恋愛偏差値0.01。ー恋愛初心者溺愛されますー【完】

44.一番大切な人

凪くんが静かに、その場を立ち上がる。
「……迅」
迅さんは溜め息を漏らし、私から離れて両手を上げる。
凪くんが、迅さんに向かい走り出した。
「……まじかよ」
凪くんは迅さんの脇腹に足を振り上げる。
迅さんはその足を受け止めた。
「……まじ、痛え」
「……離せ」
「……頼むって」
「……美月になにしてんの?」
「……お前を再起動するためだって」
凪くんは、目を丸くして周りを見渡した。
「あ、ごめん。 ……でもさ、美月に触らないでくれる?」
迅さんは、溜め息をついて頭を掻いた。
「他にどうしろと?」
「知らない」
「で、呼び出した理由は?」
「あっ!」
凪くんは両手をぱちんと叩いた後に、迅さんの肩に手を置いた。
「颯って知ってる?」
迅さんは首を傾げる。
「……誰?」
「多分、三年」
「調べとく」
「お願い」
「で、なんで屋上駄目になったの?」
「颯に付き纏われてるんだよ」
迅さんは、チラッと私を見てから凪くんに視線を戻した。
「誰が?」
私は居ても立ってもいられず、その場を立つ。
「……私が中途半端な態度で接してしまったから」
迅さんは、手でおでこを覆い瞼を伏せた。
「……そういう事ね。俺は、そろそろ授業戻るわ」
迅さんは、凪くんの頭を撫でて一階に降りた。
「……皆に迷惑掛けてごめんなさい」
凪くんが私を抱き締めて、互いのおでこをコツンと当てる。
視線が重なり、二人だけの世界に落とされた。
「美月だけが悪い訳じゃないし」
反省しなきゃいけないのに、凪くんの事ばかり見てしまう。
「もう、曖昧な事はしません」
「そうして。じゃないと、頭おかしくなる」
凪くんは眉をハの字にして、目線を下げる。
今にも泣いてしまいそうで、胸がギュッと締め付けられた。
「私、多分。誰かに嫌われるのが怖いんです……」
浅く長く息を吸う。
「だから、誰にも失礼にならないようにって動いてました」
自分が凪くんにした事は——
「でも、私の一番大切なのは凪くんだから、凪くんを一番大切にしたいです」
凪くんが私を包み込む。
「……ありがとう」
その熱が。
匂いが。
私の求めている人だと分かる。
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