スパダリの溺愛はスーツを着崩すように
「…黒澤社長?怒ってます?」

「怒ってない」

「でも…」

「はぁー」

首元が窮屈に感じた。
ネクタイの結び目に指をかける。
固く締まっていたそれがわずかに緩んだ。


「一宮とは仲いいの?」


「一宮くんですか?後輩です」


「……一宮くん」


「え?」


「…いや」


ジャケットのボタンを外す。
椅子の背もたれにジャケットをかける。
それでも息苦しさが消えなかった。



「今日も眼鏡外してるな」


「……」


「どうした?」


「黒澤社長に可愛く見られたくて…」


一瞬言葉を失った。
俺のためか…可愛い…なんで彩乃はこんなに可愛いんだ…だが他のやつに見られるのは面白くない。


「俺にはどっちも可愛いよ」


シャツの袖口に指をかける。
無造作に袖を折った。
それでも熱い…。


彩乃の視線が俺の緩んだネクタイ、まくった袖に落ちた。


「彩乃…」


「…はい?」


緩めたネクタイに指をかけそのまま引き抜く。
外したネクタイをジャケットの上に放る。
ボタンも一つだけ外した。
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