完璧すぎる彼氏

譲れない思い

第23話 「譲れない想い」

プレゼンまで、あと一週間。

『KIRITANI HOME』では、社員全員が資料作りに追われていた。

「社長、このデザイン案です。」

「こっちは収支計画です。」

机の上には何十枚もの図面が並ぶ。

蒼真は一枚一枚に目を通し、静かにうなずいた。

「ありがとう。」

その時、秘書の佐藤が慌てた様子で部屋へ入ってきた。

「社長、大変です。」

「どうした?」

「今回のプロジェクト……。」

佐藤は資料を差し出した。

「最大手の『東城不動産』も参加するそうです。」

会議室がざわつく。

東城不動産。

全国に支店を持つ大手企業で、資金力も実績も圧倒的だった。

「勝てるんでしょうか……。」

若い社員が不安そうにつぶやく。

蒼真は静かに立ち上がった。

「みんな。」

社員たちが顔を上げる。

「俺たちは一番大きな会社じゃない。」

静かな声が会議室に響く。

「でも、一番人の暮らしを考える会社にはなれる。」

誰も言葉を発さない。

「利益だけを見て家を造る会社には負けてもいい。」

蒼真は真っすぐ前を見つめた。

「でも、お客様の笑顔を想う気持ちだけは、絶対に負けない。」

その一言で、社員たちの表情が変わる。

「社長!」

「頑張りましょう!」

力強い声が会議室いっぱいに広がった。

その日の夜。

残業を終えた蒼真が会社を出ると、入口の前に花音が立っていた。

「お疲れさま。」

「花音?」

花音は小さな保冷バッグを差し出す。

「晩ご飯。」

「え?」

「最近忙しくて、ちゃんと食べてないでしょ?」

中には手作りのおにぎりと、温かいスープが入っていた。

蒼真は思わず笑う。

「敵わないな。」

「何が?」

「いつも俺が先回りしてるつもりだったのに。」

花音は少し照れながら笑った。

「たまには私にも、蒼真を支えさせて。」

その言葉に、蒼真は胸が熱くなる。

彼女はもう、「守ってあげたい人」ではない。

苦しい時に隣で手を差し伸べてくれる、大切なパートナーだった。

「ありがとう。」

蒼真は花音の頭を優しくなでる。

「このプロジェクト、必ず成功させる。」

「うん。」

「そして、もっとたくさんの人に『おかえり』って言える家を届けたい。」

花音は力強くうなずいた。

「私は信じてる。」

その笑顔を見た瞬間、蒼真は改めて思う。

――どんな困難があっても、この人となら乗り越えられる。

そう信じられる自分が、今は少し誇らしかった。
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