アンドロイド総務部員(※心の中はエセ関西弁)は、一途なチャラ男の底なし沼から抜け出せない
【第73話】
仕事終わりの金曜日。先輩の車に乗せてもらい、少し遠くの海が見える公園へとやってきた。
水平線の向こうへ夕日が沈み、空が綺麗な紫とオレンジのグラデーションに染まっていく。
ベンチに並んで座ると、先輩の大きな肩がすぐ隣にあって、それだけで私の心臓はトクトクとせわしなく警報を鳴らし始める。
「律さん、今週もお疲れ様。……あのさ、こっち向いて?」
「……っ」
名前を呼ばれて振り返ると、すぐ目の前に先輩の顔があった。
いつもより少し真面目で、熱を帯びた瞳が、真っ直ぐに私を見つめている。その距離、わずか数十センチ。
「別れたとき、俺の物語のヒロインは律さんだけって言ったの、覚えてる?」
「は、はい……」
「今から、そのヒロインにキスしたいんだけど……ダメかな」
あまりにも直球な要求に、私の頭のヒューズが一瞬でぶっ飛んだ。
(き、ききき、キス……っ!?)
(アカン、無理や、死んでまう……!)
脳内漫才師はとっくに引退したはずなのに、一瞬だけツッコミが復活しそうになるくらいパニックになる。だけど、今の私はもう「アンドロイドの仮面」で逃げることはしない。
「っ……だめ、じゃない、です……」
私はぎゅっと目を瞑り、先輩のシャツの裾を両手で力いっぱい握りしめた。
恥ずかしすぎて、心臓のバクバクが先輩に聞こえてしまいそうで、全身が震える。
次の瞬間、唇に柔らかくて温かいものが、そっと触れた。
「ん……っ」
ほんの数秒のはずなのに、頭の中が甘い痺れで満たされて、時間の感覚が完全に麻痺していく。
ようやく唇が離れたとき、私は恥ずかしさのあまり、先輩の胸元に思いっきりおでこを押し当てて突っ伏した。
「律さん……? 大丈夫?」
「……だいじょばないです。もう、顔、見られません……っ」
先輩の胸に顔を埋めたまま、消え入りそうな声で抗議する。
初めてのキスは、私の世界のすべてを甘く溶かしてしまうほど、圧倒的な威力を持っていた。
仕事終わりの金曜日。先輩の車に乗せてもらい、少し遠くの海が見える公園へとやってきた。
水平線の向こうへ夕日が沈み、空が綺麗な紫とオレンジのグラデーションに染まっていく。
ベンチに並んで座ると、先輩の大きな肩がすぐ隣にあって、それだけで私の心臓はトクトクとせわしなく警報を鳴らし始める。
「律さん、今週もお疲れ様。……あのさ、こっち向いて?」
「……っ」
名前を呼ばれて振り返ると、すぐ目の前に先輩の顔があった。
いつもより少し真面目で、熱を帯びた瞳が、真っ直ぐに私を見つめている。その距離、わずか数十センチ。
「別れたとき、俺の物語のヒロインは律さんだけって言ったの、覚えてる?」
「は、はい……」
「今から、そのヒロインにキスしたいんだけど……ダメかな」
あまりにも直球な要求に、私の頭のヒューズが一瞬でぶっ飛んだ。
(き、ききき、キス……っ!?)
(アカン、無理や、死んでまう……!)
脳内漫才師はとっくに引退したはずなのに、一瞬だけツッコミが復活しそうになるくらいパニックになる。だけど、今の私はもう「アンドロイドの仮面」で逃げることはしない。
「っ……だめ、じゃない、です……」
私はぎゅっと目を瞑り、先輩のシャツの裾を両手で力いっぱい握りしめた。
恥ずかしすぎて、心臓のバクバクが先輩に聞こえてしまいそうで、全身が震える。
次の瞬間、唇に柔らかくて温かいものが、そっと触れた。
「ん……っ」
ほんの数秒のはずなのに、頭の中が甘い痺れで満たされて、時間の感覚が完全に麻痺していく。
ようやく唇が離れたとき、私は恥ずかしさのあまり、先輩の胸元に思いっきりおでこを押し当てて突っ伏した。
「律さん……? 大丈夫?」
「……だいじょばないです。もう、顔、見られません……っ」
先輩の胸に顔を埋めたまま、消え入りそうな声で抗議する。
初めてのキスは、私の世界のすべてを甘く溶かしてしまうほど、圧倒的な威力を持っていた。