溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~
第32話 【あきらside】――気になってしかたない
都内某所の撮影スタジオ。
カメラや照明がずらりと並び、スタッフたちが慌ただしく動き回っている。
今日は次に発売する新曲のプロモーションビデオの撮影。
本来なら気持ちを切り替えて臨まなきゃいけないのに、どうしても気分が晴れなかった。
さっきの出来事が、まだ胸の奥に引っかかっている。
思わず大きなため息がこぼれる。
「どうした? 元気ないな」
隣から声をかけてきたのは、スターライトのリーダー・リョウ。
冷静で頭も切れる、頼れる存在。
大人びた顔立ちに背丈も高く、しっかり者で機転も利く――まさに兄貴って感じの人だ。
「ああ……悪い。ちょっと、いろいろあってさ」
笑ったつもりが、どうしてもぎこちない。
リョウは優しく目を細め、ぽんと俺の頭に手を置いた。
「そうか。まあ、あんまり溜め込むなよ?」
まったく、いつもこれだ。年もそう変わらないのに、ガキ扱いしてくる。
でも、優しい。カッコいい。
男の俺からしても、リョウは憧れの存在だった。
そんな彼を見つめていると――
「どーん!」
突然、背後からアタックされた。
「なにすんだよ!」
振り向きざまに睨むと、そこにはハル。
「へへっ、ごめん。なんだかアキラが元気なさげだったから、励まそうと思って」
屈託のない笑顔に、肩の力が抜ける。
「あーはいはい。……ありがとう」
苦笑いすると、ハルはぱっと花が咲くように笑って俺の隣に並んだ。
小柄で可愛らしい顔立ち。
人懐っこい性格で、現場のムードメーカー。
彼がいるだけで空気が明るくなる。そういうところに、何度も救われてきた。
じっと見つめると、ハルが首をかしげ、にこっと笑った。
ほんと、可愛い奴だな。
俺もつられて笑顔を返していた。
撮影は進む。
けれど、調子はまるで出ない。
「ちょっと! アキラくん、どうした? もっと自然に、笑顔!」
また叱られた。何度目だろう。
カメラマンが不機嫌そうに眉をひそめ、スタッフたちの視線も痛い。
まるで針のむしろだ。
「す、すみません」
肩を落とす俺の横で、リョウが軽く肩を叩いてくれる。
その優しさが胸にしみた。
でも、ダメだ。どうしても集中できない。
頭を離れないのは、星のこと。
そして、本条守。
なんで星は、あいつなんかと遊園地に行ってるんだよ。
俺とだって行ったことなかったのに。
本当はずっと、星と行きたかった。
観覧車に乗って、笑い合って……彼女の嬉しそうな顔を隣で見たかった。
でも、俺はアイドルだ。
もし正体がバレて、大騒ぎになったら。
仕事仲間にも、メンバーにも、星にも迷惑をかける。
だから我慢してきたのに。
初めての遊園地で、隣にいたのは――俺じゃなくて、あいつ。
ったく。あいつはいったい、星の何なんだ。
ただの幼馴染、なんだろ?
「アキラ、アキラ!」
呼ぶ声にハッとして、現実に引き戻される。
ぼんやりしていたらしい。
「は、はい……すみません」
顔を上げると、プロデューサーが渋い顔でこちらを見下ろしていた。
「売れっ子だからって、舐めてもらっちゃ困るんだよね。……おい、マネージャー!」
その声に、小森さんが慌てて駆け寄ってくる。
「しっかり指導してよね。これじゃ仕事にならないじゃないか」
「も、申し訳ありません!」
小森さんが何度も頭を下げる。
その姿に、胸が締めつけられた。
全部、俺のせいだ。
顔を上げることもできず、俺はただ下を向いて黙り込んだ。
カメラや照明がずらりと並び、スタッフたちが慌ただしく動き回っている。
今日は次に発売する新曲のプロモーションビデオの撮影。
本来なら気持ちを切り替えて臨まなきゃいけないのに、どうしても気分が晴れなかった。
さっきの出来事が、まだ胸の奥に引っかかっている。
思わず大きなため息がこぼれる。
「どうした? 元気ないな」
隣から声をかけてきたのは、スターライトのリーダー・リョウ。
冷静で頭も切れる、頼れる存在。
大人びた顔立ちに背丈も高く、しっかり者で機転も利く――まさに兄貴って感じの人だ。
「ああ……悪い。ちょっと、いろいろあってさ」
笑ったつもりが、どうしてもぎこちない。
リョウは優しく目を細め、ぽんと俺の頭に手を置いた。
「そうか。まあ、あんまり溜め込むなよ?」
まったく、いつもこれだ。年もそう変わらないのに、ガキ扱いしてくる。
でも、優しい。カッコいい。
男の俺からしても、リョウは憧れの存在だった。
そんな彼を見つめていると――
「どーん!」
突然、背後からアタックされた。
「なにすんだよ!」
振り向きざまに睨むと、そこにはハル。
「へへっ、ごめん。なんだかアキラが元気なさげだったから、励まそうと思って」
屈託のない笑顔に、肩の力が抜ける。
「あーはいはい。……ありがとう」
苦笑いすると、ハルはぱっと花が咲くように笑って俺の隣に並んだ。
小柄で可愛らしい顔立ち。
人懐っこい性格で、現場のムードメーカー。
彼がいるだけで空気が明るくなる。そういうところに、何度も救われてきた。
じっと見つめると、ハルが首をかしげ、にこっと笑った。
ほんと、可愛い奴だな。
俺もつられて笑顔を返していた。
撮影は進む。
けれど、調子はまるで出ない。
「ちょっと! アキラくん、どうした? もっと自然に、笑顔!」
また叱られた。何度目だろう。
カメラマンが不機嫌そうに眉をひそめ、スタッフたちの視線も痛い。
まるで針のむしろだ。
「す、すみません」
肩を落とす俺の横で、リョウが軽く肩を叩いてくれる。
その優しさが胸にしみた。
でも、ダメだ。どうしても集中できない。
頭を離れないのは、星のこと。
そして、本条守。
なんで星は、あいつなんかと遊園地に行ってるんだよ。
俺とだって行ったことなかったのに。
本当はずっと、星と行きたかった。
観覧車に乗って、笑い合って……彼女の嬉しそうな顔を隣で見たかった。
でも、俺はアイドルだ。
もし正体がバレて、大騒ぎになったら。
仕事仲間にも、メンバーにも、星にも迷惑をかける。
だから我慢してきたのに。
初めての遊園地で、隣にいたのは――俺じゃなくて、あいつ。
ったく。あいつはいったい、星の何なんだ。
ただの幼馴染、なんだろ?
「アキラ、アキラ!」
呼ぶ声にハッとして、現実に引き戻される。
ぼんやりしていたらしい。
「は、はい……すみません」
顔を上げると、プロデューサーが渋い顔でこちらを見下ろしていた。
「売れっ子だからって、舐めてもらっちゃ困るんだよね。……おい、マネージャー!」
その声に、小森さんが慌てて駆け寄ってくる。
「しっかり指導してよね。これじゃ仕事にならないじゃないか」
「も、申し訳ありません!」
小森さんが何度も頭を下げる。
その姿に、胸が締めつけられた。
全部、俺のせいだ。
顔を上げることもできず、俺はただ下を向いて黙り込んだ。