素のまま恋



資料の入ったかごを差し出せば、貴公子は『ふうん』と、受け取った。


「さんきゅ。後で配っとくわ」

「お……はい。お願いします。では……」


危ない危ない。貴公子と話してた癖か『おう』って答えそうになった。
もうこの姿での失態はさけたいため、私は杏奈の背中を押しながら自身の教室へと向かった。




そして教室に着けば、


「……なにその顔」


表情筋が緩みきる杏奈の顔が私を見つめてきて。


「だって、なんかいい雰囲気じゃない!?」


……一体どこをどう見たらそんなこと感じるのか。微塵も理解できない。


「杏奈、眼鏡したら?」

「いやいや!視力は全然いいから!」


それなら尚更理解に苦しむ。


「だってさだってさ、二年生の中じゃわりと硬派で通ってるみたいなんだよ?鼓くん!」

「硬派?」

「そう!あまり女子とは話さないって。なのに、鼓くんから詩姫のとこに来て、"どした?"ってさ!他の女子からしたら、珍しくて羨ましい光景だったんじゃないかな!」


杏奈ははしゃぎながら、貴公子の真似をして見せた。
そもそも硬派だとか、女子とは話さないとかって、どこからそういう話を聞いてくるのかが気になる。


「……そんなの旅館と華道家での繋がりがあるってだけでしょ。考えたらすぐ分かることだと思うけど?」

「えーそれは分かるけどさー」

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