素のまま恋
そんなこと、貴公子に出来るわけないでしょう私が。
だから気持ちちょっと背中の服を掴んだだけに。
すると躊躇う私にしびれを切らしたのか、貴公子がヘルメットを外して振り返ってきた。
「んなちょこんと掴んだだけじゃ、道路に振り落とされっぞ」
「だ、だって」
「何照れてんだよ。らしくねぇな。いいから早くしろ。それとも恥ずかしいからやめるか?」
「……は!?恥ずかしくなんかないっての!」
「だったら、しっかり掴まってろ」
明らかに挑発にのったと思う。
なんとか意を決して貴公子に腕を回し、ドライブへ。
意外にも安全運転で、信号もちゃんと止まるタイプみたい。
どこに向かってるのか聞いたけど、てきとう、と言われ後ろから頭突きをかましてやった。
「いてっ……つか皆森、お前心臓うるさくね?」
「……っ!?」
「あ、おい!!離すなって!」
赤信号で止まった時に言われ、つい手を離した私に、貴公子に手を掴まれた。
……今のは貴公子のせい。
本当にただただ、バイクを走らせるだけで、休憩といい香りがしていたパン屋に寄った。
杏奈の家とはまた違う商品があるけど、少しお高め。その分美味しいといいな。
「中で食えるし、いいとこ見っけたな」
「だね。貴公子は何にするの?」
「俺はがっつり食うぜ?お前は?」
「私もがっつりいきたい気分かも……」
それから、トレーを手にする貴公子にあれとってこれとって、と食べたいのをのせてもらい、会計を済ませ席についた。