ルーチェに恋をして

第二十二話 二人だけの秘密

「………………」
「……ご、ごめんね、こんな話聞けるものじゃない……のに」

紡は言葉を失っているのか、なんて返すべきか悩んでいるのか、黙ったまま。

「だ、大丈夫だよ、もう数年前だし。奏多とつむくん、それに蓮くんにも出会えて……」
「大丈夫ではないだろ。」

同情ではなく、本心から。
紡が言ってくれた気がした。

「そういう傷は数年でどうにかなる話じゃないだろ。大人になってもずっと……どこかで引きずる傷だ。」

——心の古傷が少し揺れる。
胸の奥がきゅっと締め上げられる感覚に何か込み上げてきそうで、困った。

……我慢。
ソファーの上なのに足を上げて体操座り、その後はひたすら目を泳がせて溢れそうなものを誤魔化した。
どうにか堪えきれた時、隣に座る紡をちらっと覗く。

「……つむくんの話もきいていいの?」
「この話の後だと僕の話はどうってことない気がするけどね。」

笑って眉を下げるその表情は色んな感情を含んでいる、気がした。
紡は前を向いたまま話す。

「僕、兄がいるんだ。その兄はここの卒業生でね。去年までここで過ごしてた」
「え……兄弟でステラなんて……つむくんのお兄さんも凄いんだね……?!」

このクラスは兄弟だから入れるものでもない。
……むしろ兄弟でステラに入学できた例は他にあるんだろうか?
そのくらい凄いことだと思う。

「……あ、だから安西さんのこと知ってたんだね!」
「ん?あぁ、そう。安西は兄の担当だったから」

 最初の頃の記憶と繋がってすっきりする。
 紡はそのまま話を続けた。

「兄さんは優しい人なんだ。和裁師としても誰より優れていて、誰からも愛されて。」

「……僕の憧れだった。」
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