同居人がめんどくさい
その笑顔には、さっきまでの必死さはない。

穏やかな笑顔は、女性の隣に座る男性同様に不思議な余裕感を与える。

「ごめんね。私たちさ、怪しいものじゃないのよ。」

って言ってもそれを証明出来るものはないんだけどね、と女性は付け加えてアハハと豪快に笑う。

「ただ、もし住むところを探してるなら、私たちのツテを当たることもできるよ...と、思っただけ。」

途中、少しだけ言い淀みながら、そう言った。

女性は私の表情を伺いながら、ニコニコと微笑む。

ツテを当たる...?

まさか、見ず知らずの...この隅田川沿いのベンチで出会った知らない女(私)に、部屋を貸し与えてくれるとでも言うのだろうか。

「え...」

やはり上手く返答ができなかった。

こんなこと言われるとは思っても見なかったのだ。

もう一度、女性と男性を見る。

どこにでもいる、ごく普通の夫婦といった2人に見える。

身なりは小綺麗にしているけれど、身につけているものは特別高価なものには見えない。

いや、でも、人は見かけでは決まらない。

案外、お金持ちこそ、ラフな格好をしているものだと言う人もいる。

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