ひまわりが咲く場所で

入院生活

それから、私の生活は一変して、真っ白な無菌室のベッドの上がすべてになった。
髪の毛が少しずつ抜け始める前に、お母さんに頼んで髪を短く切った。鏡に映る自分の姿は、まるであの頃の病室にいた小さな女の子に戻ってしまったみたいで、ときどき無性に泣きたくなる。

クラスのみんなからは、寄せ書きのアルバムが届いた。
『莉緒ちゃん、待ってるよ!』『早く元気になって戻ってきてね!』
みんなが書いてくれた温かい言葉が、今の私には少しだけ眩しすぎて、机の引き出しの奥にそっと仕舞い込んだ。私はもう、みんなが知っている「完璧で元気な莉緒」ではいられないかもしれないから。
だけど、るいくんだけは違った。
面会制限があって、ガラス越しやカーテン越しでしか話せない日でも、るいくんは学校が終わると毎日、必ず病院にやってきた。

「はい、今日のプリント。授業のノートも一応写しておいたから」

面会室の透明なアクリル板の向こうで、るいくんがノートを広げて見せてくれる。いつものぶっきらぼうな口調だけど、ノートの文字は驚くほど丁寧に、分かりやすく整理されていた。

「ありがとう、るいくん。相変わらず、学校では女の子たちにツンツンしてるの?」

「バカ言え。それどころじゃないだろ」

るいくんは少し照れくさそうに視線を外すと、すぐにまた、私の顔を真っ直ぐに見つめた。その瞳には、最初のような怯えや絶望はもうなかった。私の病気と、私の現実と、ちゃんと正面から向き合おうとしてくれている、強い男の子の目だった。
「莉緒、来週から新しい治療が始まるんだろ。……しんどくなったら、いつでも俺に八つ当たりしていいからな」

「ふふ、八つ当たりなんてしないよ」

「いや、しろよ。弱音吐かないのが、お前の悪い癖だろ」

るいくんはアクリル板に、そっと自分の大きな手のひらを重ねた。
私は、その手のひらに合わせるように、内側から自分の小さな手を重ねる。
直接触れ合うことはできなくても、ガラスを透かして、るいくんの確かな温もりが伝わってくるような気がした。

「約束したからな。俺は絶対に、お前の手を離さない」

その言葉が、明日からの過酷な治療に立ち向かうための、私の何よりの特効薬だった。
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