ひまわりが咲く場所で
退院の日。
久しぶりにくぐった病院の自動ドアの向こうには、冷たいけれど、どこか愛おしい冬の風が吹いていた。

「はい、退院おめでとう」

るいくんが、私の小さな荷物を持って隣に並んでくれる。学校の制服ではない、私服のるいくんとこうして並んで歩くだけで、なんだか胸がくすぐったい。

「ありがとう、るいくん。……ねえ、これ見て」

私はポケットから、小さなスケジュール帳を取り出して広げた。そこには、私の拙い字で、いくつかのリストが書き連ねてあった。

「何これ?」

「『死ぬまでにしたい10のこと』! 私がこれからの1年で、るいくんと一緒に叶えたいことのリストだよ」

るいくんは少し呆れたように、でもすごく優しい目でそのノートを覗き込んだ。


莉緒の「死ぬまでにしたい10のこと」リスト
1. 誰もいない冬の海を見る
2. 授業をサボって、二人で屋上に行く
3. るいくんの手作りお弁当を食べる
4. 夜の遊園地で、観覧車に乗る
5. お揃いのキーホルダーを買う
6. プリクラを撮る
7. 二人で料理を作る
8. 初恋のひまわり畑に、もう一度行く
9. るいくんに、いっぱいの「ありがとう」を伝える
10. (まだ秘密)

「……なんだよこれ、サボるのとか入ってんじゃん」
るいくんはふっと吹き出した。

「いいじゃん、1回くらい! 私、ずっと真面目な優等生だったんだから。……ねえ、一緒に全部叶えてくれる?」

私が上目遣いで覗き込むと、るいくんは少し耳を赤くしながら、私の頭をぽんぽんと優しく叩いた。

「当たり前だろ。10個と言わず、100個でも200個でも付き合ってやるよ」

そう言って、るいくんは私の手を、今度はアクリル板越しではなく、直接しっかりと握りしめてくれた。ポケットの中で重なる二人の手は、驚くほど温かかった。


限られた時間の中で、私たちのきらきらとした、愛おしい日々が幕を開ける。
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