転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~
洋服屋に入ると、色とりどりの可愛らしいワンピースが所狭しと並んでいた。
「ユフィ、この店にある服をすべて包ませよう」
「買いませんよ!? 私のお財布事情を知ってるでしょ!」
「いや、俺が払う。サポーターへの『装備支給』は当然の義務だからな」
「今は特に雇われていませんし、普段着のワンピースは装備じゃありません!」
相変わらず極端すぎるレオンさんを必死に宥め、私は淡い水色のシンプルなワンピースを自腹で購入した。
レオンさんは「俺に払わせてくれないのか……」と、また幻の犬耳を垂らして落ち込んでしまったけれど、これ以上甘えるわけにはいかない。
店を出てしばらく歩くと、大通りの片隅でキラキラと輝く露店のアクセサリー屋さんが目に留まった。
「わあ、可愛いな……」
「……ユフィ。これなどどうだ」
ふと、レオンさんが真剣な顔で手に取ったのは、豪奢な装飾が施された一つの指輪だった。
「えっ!? ゆ、指輪!?」
「ああ。これを君が身に付ければ……、有象無象の虫除けにもなるし、俺の……」
「ダメですダメです! そんな高そうなもの、絶対にダメです! 普段使いできませんし」
「俺の全財産を懸けても安いものだ。頼む、君にこれを贈らせてくれ」
「却下です!」
押し問答の末、私が全力で拒否すると、レオンさんは今日一番の絶望顔で項垂れてしまった。
(いくら有能なサポーターを囲い込みたいからって、指輪をプレゼントして既成事実を作ろうとするなんて、冒険者の引き抜き工作も恐ろしいところまできているわ……!)
とはいえ、あまりに落ち込むレオンさんを見ていると、なんだか少し可哀想になってきた。
私は露店の端の方に並べられていた、安価なアクセサリーの山に目を向けた。
「あ、じゃあ……代わりに、これなら……」
私が手に取ったのは、翡翠色の小さな石がついたネックレスだった。
宝石ではなく、ただのガラス珠だ。
値段は奇しくも『銀貨三枚』。
この街に辿り着いた時の私が持っていた全財産と同じ。
「これ、レオンさんの瞳と同じ色で、すごく綺麗ですし。……これなら、買ってもらっても、いい、かなって……」
私が少し躊躇しつつも尋ねると、レオンさんの瞳がカッと見開かれた。
「俺の瞳と、同じ色……。君が、俺の、色を……身につけてくれるのか」
「ええと、まあ、そういうことになりますね」
「買う。銀貨三枚と言わず、白金貨百枚出そう」
「お釣りが出なくて店主さんが泣いちゃうから、ちゃんと銀貨三枚で買ってください!!」
渋々な態度で支払ったレオンさんは、その場で自ら私の首にそれをつけてくれた。
そして、私の胸元で揺れる翡翠色のガラス珠を見て、彼は嬉しそうに、とろけるような笑みを浮かべている。
最強騎士様とのお出かけ業務は、背後の修羅場を他所に、どこまでも平和に進んでいくのだった。