転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~

「見ていてください姉上! 僕の【炎魔法】の精密なコントロールを!」

 カイルがタライの水に手をかざすと、水が瞬時にお湯に変わった。
 さらに、洗い終わった服を空中に放り投げ、微弱な熱風で一瞬にしてフカフカに乾燥させていく。
 【炎魔法】さすが当たりスキルである。
 生活においても万能とは。

「ど、どうですか姉上。この温もり……僕の姉上への愛の熱さです!」

「カイルの魔法、乾燥機みたいで便利ね」

 私が拍手すると、隣から舌打ちが聞こえた。
 見れば、レオンさんが恐ろしいほどのスピードでタライの服を揉み洗いしている。

「俺は……魔法など使わずとも、この身一つで君の負担をなくしてみせる。見ろ」

 レオンさんの手は、もはや残像しか見えない。
 最強騎士団長の驚異的な身体能力と動体視力を「洗濯物の汚れをピンポイントで弾き飛ばす」という謎の技術に全振りしているのだ。
 服の繊維を一切傷つけず、あっという間に真っ白な山の出来上がりである。

「レオンさん、すごい体力! さすが前衛職ですね、頼りになります」

「……ユフィ。俺の体力は、夜も……いや、いつでも無限だ。君のためなら何でもする」

 意味深な視線を送ってくるレオンさん。
 二人の凄まじいハイペースのおかげで、山のようだった洗濯物はあっという間に片付いてしまった。

「二人とも、ありがとう! おかげで助かっ――」

 私が感謝の言葉を口にしようとした、刹那に割り込む懐かしい声。

「――見つけましたぞ、カイル坊ちゃま!!」

 裏庭の入り口に、エーデルガルト家の紋章が入った豪華な馬車が急停車した。
 降りてきたのは、顔を真っ赤にして怒り狂う、実家の老執事セバスだった。

「セ、セバス!? なぜここに!」

「なぜも何もありません! 王立学園の期末試験をすっぽかして、こんな辺境で何をしておられるのですか! 奥様が泡を吹いて倒れられましたぞ!」

「し、試験なんてどうでもいい! 僕は姉上の専属パートナーに――」

「問答無用でございます!!」

 セバスは老齢とは思えぬ恐るべき腕力でカイルの首根っこを掴むと、そのままズルズルと馬車へ引きずっていった。

「ああっ! 離せセバス! 姉上えええぇ! 僕のサポーター枠、絶対に空けておいてくださいねえええぇええ……」

 窓から身を乗り出して叫びながら、カイルを乗せた馬車は砂埃を上げて王都へと走り去っていった。
 
「試験すっぽかすなんて、相変わらず無茶するなぁ」

 私が苦笑いして振り返ると、そこには、カイルという強敵が消え去り、物理的に勝者となったレオンさんが、安堵と優越感の入り混じったドヤ顔で立っていた。

「……ユフィ。これで、君の隣は、名実ともに俺だけのものだな」

「カイルも学業がありますし、やっぱり冒険のサポートはレオンさん専属で頑張りますね」

 私の元気な返事に、レオンさんは恍惚とした表情で空を仰いだ。

 私のサポート能力をどんだけ高く評価してくれてるんだろう。
 いい人過ぎる。
 賃金も弾んでもらえるとなお嬉しい。
 レオンさんの綺麗な横顔を見ながら、そんなことを思わず考えていた。
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