転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~
「ガルド。冒険者ギルドを通し、正式な依頼を出したい」
いつの間にか背後に立っていたレオンさんが、ギラギラと燃える瞳でギルドマスターのガルドさんを見据えている。
「依頼だと? おいおい王子様、こりゃあ随分な重さだが……」
「白金貨十枚だ」
ギルド中の冒険者たちが、揃いも揃って一斉に悲鳴を上げた。
白金貨十枚!?
王都の一等地に小さな家が建つレベルの莫大な金額だ。
「依頼内容は『国境調査地への同行』。対象は、冒険者ユフィへの単独指名同伴依頼だ」
「なっ……だ、団長!? 我々の危険な調査遠征に民間人を巻き込むだけでなく、王家から支給された大切な活動資金をそのような私的感情で……!」
「黙れシオン。これは必要経費だ。俺の精神と魂の安定に不可欠な、最重要投資だ」
レオンさんは真顔でシオンさんを黙らせると、スッと私の方に向き直った。
「ユフィ。俺は君の力を高く評価している。危険な目には絶対に遭わせない。だから……俺の仕事に、君の力を貸してくれないか?」
「は、はい!! 喜んでお受けします!!」
私は、あまりの金額に目がくらみつつ、カウンターから身を乗り出して即答した。
白金貨十枚!
一生分のケーキが買えるかもしれない!
それに、レオンさんがここまで破格の報酬を積んでまで私の「バフ能力」を買ってくれているのだ。
先日、冒険者デビューしたての支援職の端くれとして、これほど名誉なことはない。
「ありがとうございます、レオンさん! 報酬に見合うよう、優秀な専属サポーターとしてきっちりお仕事させていただきます」
「ああ……君が傍にいてくれるなら、どんな魔境も楽園だ」
ガッチリと両手を握り合い、完璧なビジネスパートナーとしての絆を確かめ合う私とレオンさんの横で、シオンさんが「予算が……受付嬢のお小遣いに……」と白目を剥いてついに気絶しかけていた。
「よし、商談成立だな!」
ガルドさんが豪快に笑いながら、指名依頼の受理印を書類にバンッと押した。
「シオン、気絶している暇はないぞ。すぐに遠征の準備をしろ。ユフィが乗る馬車は、最高級のクッションと魔石ヒーターを完備したものを手配するんだ。揺れで彼女の美しい髪が乱れては困るからな」
「ちょっ……調査遠征に貴族の馬車を持ち込む気ですか!? 目立って仕方ないでしょうが!」
「文句があるなら貴様が四つん這いになって馬の代わりをしろ。ユフィの乗り心地を最優先だ」
「理不尽すぎる!!!」
シオンさんの悲鳴がギルドに響き渡る。
グリゼルダさんやブロンさんたちは、「新婚旅行か?」「若いねえ」「王子様も大変だな」とゲラゲラ笑いながら見守ってくれている。
「ということで、ガルドさん。数日お休みいただきますね! 受付嬢はやめませんが、冒険者としての経験も積んでおきたいので!」
「おう、気をつけてな。おい王子様。依頼として受ける以上、ユフィはプロの冒険者扱いだ。だが、もしお前がうちの看板娘に指一本でも触れて泣かせたら……国境ごと叩き斬るからな」
「言われるまでもない。君の髪の毛一本すら、俺の命に代えても護り抜いてみせる」
レオンさんは私の首元で揺れる翡翠色のネックレスを一瞥し、酷く甘く、そして力強く宣言した。
こうして、破格の報酬を懸けた国境地帯への調査遠征が幕を開けたのだった。
そんな、私たちが国境で「とんでもない光景」を目の当たりにし、私の【待機】と【接続】が世界の理を揺るがしかねない事態を引き起こすことになるなんて、まだ誰も予想していなかった。