転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~
「な、ななな……」
「お見事です女神!」
「どうなっているんだ!? ユフィ殿は精霊の加護でも受けているのか!?」
騎士たちが騒然となる中、シオンさんが震える指で完成した地図を指差した。
「ゆ、ユフィ殿!? この『魔物の数』から『トラップの位置』『レア鉱石の場所』まで……これはいったい、どういう高等魔術なのですか!? 王宮の筆頭宮廷魔術師ですら、これほど広範囲の透視は不可能ですが!」
「高等魔術というか、私の【接続】スキルで、大地の地脈ネットワークと羊皮紙を繋いで、情報を流し込んでみたんです。使えますか?」
「情報を! 流し込んだ!? いやいや、人間が莫大な情報量を処理すれば、普通は発狂しますよ!?」
シオンさんが頭を抱えて叫ぶと、私の首元のシロがパチリと目を開け、得意げに胸を張った。
『ふはは! くそおっさんめおどろいておる。我があるじは、この古竜たるわれと心臓を共有しておるのだぞ? 脳の処理能力も耐久力も、もはや神の領域! この程度の索敵など、瞬きするより容易いんだわー! ぴゅいい』
「古竜……それはもう戦略兵器じゃないですか?」
眩暈を覚えたように儚くふらつくシオンさんの横で、レオンさんだけが「さすが俺の至宝だ。その知性も神々しい」と、一人でウンウンと誇らしげに頷いていた。
「まあ、この地図が正確かどうかの実証実験もしながら、行ってみるのはいかがですか? 危険な場所はなんとなくわかったので」
こうして、私が作成したマッピングを頼りに、進軍が始まった。
それはもう、調査というよりピクニックだった。
「あ、レオンさん。そこから三歩先、踏むと爆発する地雷草があるっぽいです」
「わかった」
「シオンさん、右の茂みに擬態したスライムがいるので注意してください。あと、その岩の下に珍しい回復薬の素材があるので拾っておきますね! 【接続】でとれるかな?」
私が魔法の杖ならぬその辺でひろった棒切れを振り回すと、まるでとりもちのようにぺたっと素材が棒にくっつく。
めちゃくちゃ便利。
トラップは全て事前に回避。
レアアイテムは歩きながらピンポイントで回収。
不意打ちは一切成立せず、魔物と遭遇したとしても、私が「あ、前方に魔物です」と言い終わる前に、レオンさんが目にも留まらぬ速さで斬り捨ててしまう。
「シオン副団長。俺たち、護衛として来ましたけど、やること全くないですね」
「言うな。俺たちの存在意義が揺らぐ」
後ろを歩く騎士たちが、暇そうに雑談を始めている。
「レオンさん、すごいです! 私が索敵した端から敵を倒してくれるから、すっごく楽です。私たち、最高のパーティですね!」
「……!」
私が満面の笑みで親指を立てると、レオンさんは顔を真っ赤にして口元を覆い、バタッとその場に膝をついた。
「だ、団長!? 敵の攻撃ですか!?」
「いや、ユフィの『最高のパーティ』という言葉が、俺の心臓を貫いただけだ……ああ、彼女の笑顔を守るためなら、俺はこの森の木を全て切り倒して平地にしてもいい……」
「やめてください自然破壊だめです。あと、シロを睨みつけるのもやめてくださいね」
シロへのジェラシーを力に変え、レオンさんはその後も凄まじいペースで魔物を殲滅していった。
――そして。
お昼休憩も挟みつつ、順調に森の奥へと進んでいた時だった。
「……ん?」
大地の脈絡に【接続】し続けていた私の脳内に、強烈な何かが走った。
チクチクと肌を刺すような、おぞましく淀んだ魔力の気配。
「ユフィ、どうした?」
私の足が止まったことに気づき、レオンさんが瞬時に真剣な騎士団長の顔に戻る。
「レオンさん……この先です。この先の谷底で、大地の魔力がおかしくなっています。何者かが、無理やり魔物を集めてるみたいな……」
私が指差した先。
鬱蒼と茂る木々の間から見える断崖下。
黒い靄に包まれた不気味な巨大遺跡が姿を現した。
「あそこが、今回の魔物異常発生の『元凶』か」
レオンさんが剣の柄に手をかけ、シオンさんたちも一斉に表情を引き締める。
ただのギルドの受付嬢として第二の人生をスタートさせた私が、ついに国――といっても隣国のだけど――を脅かす陰謀の渦中へと足を踏み入れた瞬間だった。