転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~
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 街を出てすぐの街道。
 馬車の御者台の隣で、私の首元に巻き付いている黒鉄色をした古竜シロが、誇らしげに胸を張った。

『あるじよ! 道中の安全は、この古竜たる我に任せるがよい!』

「シロ、何かしてくれるの?」

『うむ! 主の魔力の気配を、この世界から完全に隠蔽する【絶対隠蔽結界】を張ってやろうと思ってな。 これで、いかなる強力な魔物だろうと、主を魔力探知で見つけ出すことは不可能。完全に透明になったも同然だ、ぴゅい! ぴゅい!』

「エンカウント率ゼロのステルスバフだね!」

 私は大喜びでシロの頭を撫でた。
 これなら、対人間にはわからないけれど、道中の魔物との無駄な戦闘を極限まで減らすことができそう。
 ジュリアンさんも「素晴らしい経費削減だ!」と拍手喝采である。

 私は王都で待つ(?)レオンさんの顔を思い浮かべながら、ワクワクと胸を弾ませていた。

 ――しかし。
 私はこの時、完全に失念していたのだ。
 私の魔力が『世界から完全に隠蔽された』という事実が、王都にいるであろうあの激重な最強騎士に、どのような大パニックを引き起こすのかを。

 ★

 同時刻。アルヴェリア王国、王宮。

「……で、殿下!!」

 派閥争いの粛清を無慈悲に進めていた第二王子レオンティウスの執務室に、宮廷魔術師が血相を変えて転がり込んできた。

「ど、どうしようもありません! 殿下に命じられて隣国の辺境都市ルシェルシェに居られるユフィ様の魔力を遠隔探知しておりましたが……たった今、ユフィ様の魔力が、世界から完全に消失いたしました……!!」

 その報告を聞いた瞬間。
 レオンティウスの執務机が、一瞬にして分厚い氷に覆われ、粉々に砕け散った。
 室内の気温が絶対零度まで下がり、窓ガラスが凍りついて軋む音を立てる。

「……消えた、だと?」

 振り返ったレオンティウスの翡翠色の瞳には、理性の欠片も残っていなかった。
 あるのは、己の半身を奪われた狂竜のような、恐ろしいまでの殺気と絶望。

「俺のユフィに手を出した愚か者がいるということか。……俺の私的な護衛騎士団を出撃させろ。国境を封鎖し、草の根を分けてでも見つけ出せ。彼女の髪の毛一本でも傷つけた者は、九族九代まで氷の地獄に沈めてやる……!!」

 能天気な魔女見習いと銭ゲバ商人による『コスパ最強の珍道中』は。
 こうして、未曾有の『大捜索パニック』の引き金となったのだった。
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