ひまわりが咲く場所で(続)
事件のあと、病院の警備はさらに厳しくなった。

職員証の確認が増え、警備員も院内を巡回している。

それでも梨衣の不安は消えなかった。

「また来るのかな……。」

ナースステーションでつぶやくと、隣にいた先輩看護師が心配そうに声をかけた。

「一人で抱え込まないでね。」

「はい……。」

その日の夜。

仕事を終えた梨衣は、更衣室へ向かった。

ロッカーを開けた瞬間、一枚の写真が床に落ちる。

「え……?」

写っていたのは、病院の中庭で笑っている梨衣。

最近撮られたものだった。

裏には赤い文字で書かれている。

『君は逃げられない。』

梨衣の手が震えた。

「梨衣。」

聞き慣れた低い声がする。

振り向くと、瑠唯が立っていた。

写真を見た瑠唯の目が鋭くなる。

「……またか。」

梨衣は涙をこらえながら言った。

「もう、どうしたらいいのか分かりません……。」

瑠唯はしばらく黙っていた。

そして静かに写真を封筒へ戻す。

「俺を見る。」

「……え?」

「落ち着け。」

梨衣は瑠唯の目を見つめた。

冷たく見える瞳。

けれど、その奥には確かな安心感があった。

「一人で背負うな。」

それだけ言うと、瑠唯は梨衣の肩に自分の白衣をそっと掛けた。

「少し寒いでしょうか……。」

「病院は冷える。」

ぶっきらぼうな返事。

それでも梨衣は、その不器用な優しさに少しだけ笑顔を取り戻した。

その様子を、更衣室の少し開いた扉の隙間から見つめる人物がいた。

神崎蓮だった。

「……そんな顔で笑うんだ。」

蓮は静かに目を伏せる。

「その笑顔は、僕だけに向けてほしいのに。」

そうつぶやくと、誰にも気づかれないまま、その場を離れていった。

翌朝。

瑠唯の机の上には、一通の封筒が置かれていた。

差出人は書かれていない。

中には一枚の紙。

『邪魔をするなら、次は先生の番だ。』

瑠唯は紙を静かに折りたたみ、表情一つ変えずにつぶやいた。

「……好きにしろ。」

その瞳には、冷たい怒りだけが宿っていた
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