死神の旦那様は、花嫁菓子しか食べられない
壁掛け時計の音はこんなにも大きかっただろうか。
静まり返った自室で、朔夜は一人座っている。
「朔夜様」
障子の奥から小春の細い声が聞こえた。
すでに小春は部屋を離された。その事情は鷹宮から小春に伝わっている。
朔夜は重くなる胸から息を大きく吐いた。
「どうした」
すっと障子が開く。
寝着に羽織を着た小春が膝を突いていた。
その顔には、悲壮の色は滲んでいなかった。
「寝る前のご挨拶ができていなくて」
小春はいつも通り笑っていた。けれど、障子を開けた指先だけは冷えていた。
「すまない、気を使わせたな。……ラムネ作りは、どうだ」
気まずい雰囲気に朔夜が話を続ける、
「はい。なかなか進展しなくて困っています」
「そうか……」
指先が膝あたりを彷徨い落ち着かない。
「しばらくは試行錯誤が続きそうです」
小春が眉を下げて、笑う。
「ああ、焦らすつもりはない。小春がしたいようにすればいい」
一瞬だけ、小春の笑みが揺らいだ。
「……いつも見守っていただきありがとうございます。では、お休みなさいませ」
「ああ。おやすみ」
そして、障子が閉じる音だけが小さく夜に響いた。