冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
郊外にあるヘリポートのある場所に到着した。
「着いたな」
「は……い……」
恭司が美桜の身体をお姫様抱っこして立ち上がった。
「もう着付けずにおくか。寒いだろうから、ほら」
恭司が自身の黒いコートを美桜の身体にかけてくれた。
そうして、ハッチが開くとステップを降り始める。
海辺だからか潮騒の音が聞こえてきて、磯の香りが鼻腔を突いてきた。
(ヘリポートがある建物、発着場とか自衛隊や病院以外にもたくさんあるんだ……?)
世の中は自分の知らないことでいっぱいだ。
どうやら浜辺からホテルへと直結しているようだ。白い壁でできている高層の建物は、まるで灯台のようにも見えなくもなかった。
桃色の振袖姿の美桜はといえば……恭司が自分のコートをかけて着物の乱れを隠してくれていたので、寒くはなかった。
砂浜の上を踏みしだく音が聴こえる。
冷たい風が吹くと、彼の足下の砂が舞い踊って、少しだけ幻想的な雰囲気だった。
ヘリの中で恭司にあれこれされたので、正直身体がぐったりしている。
(恭司さんは体が丈夫、体力おばけ。それにしても、こんな格好で運ばれて、ホテルの人に変だって思われないかな? コートで隠れてるから、着物が乱れているのは見えないはず)
美桜の周囲のことが気になる特性は、やや父親譲りの気質がある。
ふと、父のことが頭を過った。
(お父さん、今度会ったらもっとちゃんとお話ししたいな)
新宮本家では寡黙で厳格な父とはあまり話はしなかった。けれども色々と察してくれたのだろう。恭司との仲を認めてはくれたので良かったとは思う。
(新宮部長もちょっとだけ怖い事を言ってたけど、結局は新宮環さんの目を誤魔化したりして、恭司さんと私のことを応援してくれるために、色々裏で立ちまわってくれてたんだろうな)
新宮順一は、美桜が小さい頃からよく構ってくれていたので、兄のような存在だったのだが……。
他にも娘たちはたくさんいるのに、どうして自分のことをそんなに気に入ってくれていたのだろう?
「少し思い出したことがある」
恭司がポツリと呟いた。
美桜は彼の顔を覗き込んだ。
「思い出したこと、ですか?」
「ああ。子どもの頃の話だ。母親は俺を新宮本家に預けて、しばらく療養して過ごして、落ち着いた頃にどっかに消えた。新宮本家に預けられた俺は一人で過ごすことが多かった。親父は忙しかったし、あの調子で義母は俺のことを嫌っていたからな」