冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
「なんか心配だな」
「心配ですか?」
「ああ、俺から逃げた前科があるからな。案外と薄情なところもあるし、せっかくの約束も反故にされるかもしれない」
「ミオちゃんのお世話はちゃんとしますから」
恭司が黒髪をかき上げながら何やら考え事をしていたが、美桜へと視線を移してくる。
「そういやあ、あんた、わりと仕事の命令とかは聞きそうだよな」
「そうですね? ちゃんとお仕事は頑張りたいと思っています」
「だったら……」
恭司が美桜の顔に両手を添えてくる。
気付いた時には、彼の顔がすぐそばにあって――二人の唇が重なり合った。
そうして、恭司がふっと口元を綻ばせてくる。
「社長命令だ。ちゃんとこれから毎日ミオの世話に来てくれよ」
ドクン。
美桜の心臓が跳ね上がる。
「……毎日ですか?」
「ああ、毎日だ」
恭司が極上の笑みを浮かべた。
「そうして、一緒に飯を食べよう」
あまりにも破壊力抜群で――美桜の心は早鐘を打ち続ける。
彼女は頬を朱に染めながら返事をした。
「社長命令でしたら」
「俺の可愛い飼い猫はツレないな」
そうして――美桜は名残惜しさを感じながら自宅マンションへと戻ったのだった。
***
エレベーターの中。
美桜は自分の唇に指で触れた。
「毎日、一緒にご飯」
林檎を一緒に食べた時の話。
美桜が毎日誰かとご飯を食べられたら幸せだと話したから、恭司は気を遣ってくれたのだろう。
(恭司さんは優しい)
恋愛経験がないからこそ、舞い上がらないように気をつけたかったが、どうしても限界がある。
あれだけ接触されたら、好きにならないようにするのが難しいぐらいだ。
(女性に困らない男性だから、女性の相手に慣れていて、私にも優しいだけに過ぎない。だから、勘違いしないようにしなきゃ)
結婚願望はなさそうだった。本人にその意思がないということ、美桜にとっての――幸せな家庭を築ける男性ではない可能性がある。
(恭司さんにはもっときらびやかな女性が似合う気がする)
先ほど彼の隣を歩いたからこそ、そう強く感じてしまった。
本来ならば手の届かない相手だ。
自分は彼に相応しい相手ではない。
そうは思うけれども、休みのあいだ中、彼に抱きしめられて過ごしたことを思い出してしまい、体が勝手に熱くなってしまう。
それに、「万が一、もしかしたら?」という気持ちも、自分の中に顔を覗かせていた。
ふと。
スマホのバイブレーションが振動してくる。
「あ、何だろう?」
一瞬だけ期待したが、そういわれれば、恭司の連絡先は聞いていない。
少々ガッカリした気持ちになりながら、画面の通知に目を向ける。
「新宮部長から、メール……?」
美桜はそっと通知マークをタップしたのだった。