【算数篇】0で割ったその先
◆問題①
内閣府の交通安全白書によると、歩行中の交通事故で死亡または重傷を負った人のうち、自宅から「50m以内」で事故に遭った人の割合は、全年齢で約30%にのぼるという。ある地区で昨年、歩行中の死傷事故が40件あったとすると、この割合をもとに、自宅から50m以内で起きた事故はおよそ何件と推定されるか求めなさい。

◆答え・解説
40×0.3=12より、およそ12件。玄関を出てわずか50m、多くの人が「もう着いたようなもの」と気を抜く距離である。しかし統計上、そこは最も油断の集まる危険地帯のひとつでもある。遠くへ出かけた日より、玄関を出た直後の数十歩の方が、実は危ういのかもしれない。

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◆質問②
A君の家から学校までの距離は1200mです。A君は分速60mで歩き、同時に不審者がA君の背後400mの地点から分速80mで追いかけ始めました。不審者がA君に追いつくのは、A君が家を出てから何分後か求めなさい。

◆答え・解説
速さの差を利用した、追いつき算の基本問題です。
ところで、先ほど鳴った玄関のチャイムから、ちょうど20分が経過したようですが……?

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◆質問③
ある密閉された地下室の容積は60立方メートルです。この部屋に閉じ込められた1人の人間が1分間に消費する酸素量を0.5リットルとし、空気中の酸素濃度が18%(10.8立方メートル)を切ると酸素欠乏症に陥るとします。この人間が発症するまでの時間を求めなさい。なお、初期の酸素濃度は21%とします。

◆答え・解説
(12.6 - 10.8) × 1000 ÷ 0.5 = 3,600です。
容積と割合、単位換算の複合問題です。
これほど長く保つのなら、わざわざ酸素を抜く「装置」を取り付ける必要もなかったかしら?


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◆質問④
日本の「13歳から19歳」の死因第1位は「自殺」です(厚生労働省「令和5年版自殺対策白書」より)。人口10万人あたりの死亡率を「死亡率」と呼ぶとき、この年代の死亡率が15.0であると仮定します。
全校生徒が1000人の学校があるとき、この1年間で、統計上何人の生徒が自ら命を絶つ計算になるか、小数第一位まで求めなさい。

◆答え・解説
答え:0.1人
解説:15.0 × (1000 ÷ 100,000) = 0.15。四捨五入して0.2、または切り捨てて0.1となります。
確率としては低く感じるかもしれません。
でも、あなたの学校の「0.1人分」の欠席者は、今どこで何をしているのでしょうか。

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◆質問⑤
ある村には100世帯が住んでおり、各家庭が1日に出すゴミの平均は2kgです。ある日、村全体のゴミの総量が250kgに増えました。
ゴミが増えた家庭が1軒だけで、その家庭の普段のゴミが2kgだった場合、その日は何kgのゴミを出したことになるか求めなさい。

◆答え・解説
答え:52kg
解説:250 - (2 × 99) = 52 となります。
単なる平均と合計の逆算問題です。
成人男性の平均的な骨の重さは約10kg、内臓や肉を含めた総重量は……いえ、単なる計算の話ですよ。

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◆質問⑥
美化委員の生徒5人が、校庭の古い物置から「中身のわからない黒い袋」を数袋ずつ運び出しました。1人あたりの運んだ重量の平均値は14kgでしたが、そのうち1人の生徒が体調を崩して保健室へ行き、彼が運ぶはずだった袋が1つ残されました。残りの4人で運んだ重量の平均値が4kgだったとき、残された袋の重さを求めなさい。

◆答え・解説
答え:54kg
解説:5人の合計重量は
14×5=70kg
残りの4人の合計は
4×4=16kg
よって
70−16=54kg
です。
平均値から逆算して合計の差を求める、中1「データの活用」の応用問題です。
文部科学省の統計によれば、中学3年生男子の平均体重は54.0kg。
袋の中身は、本当に「物置のゴミ」だけだったのでしょうか。

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◆質問⑦
日本の警察庁の統計によると、令和5年の一年間で行方不明者届が受理された人数は約9万人です。
これを「1日あたり」の人数に直すと、小数第一位を四捨五入して何人になるか求めなさい。

◆答え・解説
答え:247人
解説:90,000 ÷ 365 = 246.57... より、247人となります。
1時間に直せば、約10人。あなたがこのテストの1ページ目をめくってから解き終えるまでの数分間にも、日本のどこかで誰か一人が、音もなくこの世界から計算から除外されている計算になります。次は、あなたの番でないといいのですが。

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◆質問⑧
前回の宿題で「自分の家のキャッシュカードの暗証番号(4桁)」を内緒で調べてくるように言いましたね。今日はその自分だけが知っている数字を左からA、B、C、Dとして、連立方程式の練習をしましょう。

次の4つの計算を行い、その結果だけを解答欄に書きなさい。
① A + B = ( )
② C + D = ( )
③ A - C = ( )
④ B - D = ( )

※防犯のため、暗証番号そのものは絶対に誰にも教えず、計算結果のみをこの用紙に記入して提出してください。

◆答え・解説
答え:解答者によって異なる。
解説:4つの未知数に対し、4つの独立した式があれば、その値は数学的に必ず一意に特定できます。
あなたは「番号そのものは教えない」というルールを律儀に守りました。しかし、この計算結果を他人に渡すことは、暗証番号をそのまま教えるのと数学的に全く同じ意味を持ちます。
本当の意味での「情報リテラシー」とは、提示されたルールに従うことではなく、ルールの裏にある意図を見抜く力のこと。……当然、勘のいいあなたは、わざと「間違った答え」を書いて提出しましたよね?

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◆質問⑨
ある中学校の全校生徒600人を対象に、次の3つの特徴を持つ生徒の人数を推定します。
A:左利きである(出現率 10%)
B:2月生まれである(出現率 8%)
C:双子である(出現率 1%)

これら3つの特徴をすべて持つ生徒が、この学校に何人いるか求めなさい。
なお、各特徴は互いに独立しているものとします。

※実習のため、自分がこれらに当てはまるかどうかを、解答欄の隅に「○・×」で記してください。

◆答え・解説
答え:0.48人(約0人)
解説:計算上は 600 × 0.1 × 0.08 × 0.01 = 0.48人。つまり、学校に一人いるかいないかの「極めて稀な存在」であることを示しています。
一見匿名に見えるアンケートでも、わずか3つか4つの属性を組み合わせるだけで、統計学的に「あなた一人」を特定できてしまうのです。これを情報の再識別と呼びます。
自分の個性を安易にデジタルデータとして差し出すことの危うさ。それが本当のリテラシーです。
ところで……当然、勘のいいあなたは、自分の本当の属性とは違う「×」を書き込みましたよね?

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◆質問⑩
ある「荷物」を隙間なく梱包するため、底面積が
S = x^2 + 85x + 1800
となるような直方体の箱を設計します。この式を因数分解して、底面の「縦」と「横」の長さを表しなさい(ただし、縦>横とする)。

◆答え・解説
答え:縦 (x + 45) 、横 (x + 40)
解説:和が85、積が1800になる数字は45と40です。
x = 0(最小単位)のとき、底面は 45cm × 40cm となります。これは駅にある「コインロッカー(中サイズ)」の底面積とほぼ一致します。
因数分解とは、複雑な要素を整理し、掛け算の形にまとめること。
この箱に成人男性を「まとめる」ためには、あと何箇所を切り分ければよかったかしら?

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◆質問⑪
あるクラスで、40個のお菓子を欠席者を除く出席者全員で平等に分けることにしました。
出席者の人数を x 人、1人あたりのお菓子の数を y 個とするとき、関係式は y = 40 ÷ x と表せます。
ある日、教室の扉を開けると、そこにいる生徒の数は x = 0 でした。このときの y の値を求めなさい。

◆答え・解説
答え:なし(定義できない)
解説:数学において、ある数を「0」で割ることは定義されていません。分母が0になる計算は「不能」と呼ばれ、数学上では答えが存在しないことになっています。
誰もいない教室。机の上には、分けられるはずだった40個のお菓子だけが静かに残されています。
数学のルールが「0で割ることを許さない」ように、この世界もまた、存在しない者への分配を認めてはくれないのです。
……ところで、誰もいないはずの教室で今この問題を解いている「あなた」は、一体誰なのですか?
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