【美術篇】描き足される自画像
◆質問①
「絵の具」の材料についてです。
100年くらい前まで、ヨーロッパでは「マミーブラウン(ミイラ色の茶色)」という絵の具が売られていました。この絵の具の材料は、次のうちどれでしょうか?
ア.昔の王様のミイラ
イ.砂漠の特別な砂
ウ.コーヒーの豆

◆答え・解説
正解:ア
解説:大昔のエジプトで作られた本物の「人間のミイラ」を粉々に砕いて、油と混ぜて絵の具にしていました。とてもきれいな色だったので、たくさんの有名な絵に使われました。
今はもう作られていませんが、古い美術館に飾られている茶色の絵には、今も「砕かれた人間」がキャンバスに塗り広げられたまま、あなたを見つめ返しているかもしれません。

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◆質問②
19世紀のヨーロッパで流行した「シェーレ緑(エメラルドグリーン)」という鮮やかな緑色の顔料には、ある猛毒が含まれていました。その毒素の名前を答えなさい。

◆答え・解説
答え:ヒ素
解説:この顔料は壁紙やドレスにも使われ、多くの人々を中毒死させました。ナポレオンの死因の一つとも言われています。この美しすぎる緑を「死の緑」と呼ぶこともあります。もし、学校の美術室に古くからある緑の絵具が、不自然に鮮やかだとしたら。触れた指を、決して舐めてはいけませんよ。

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◆質問③
美術館では、名画の保存状態を調べるために「X線調査」を行うことがあります。この調査によって判明する、肉眼では見えない情報とは何でしょうか。

◆答え・解説
答え:絵の下に隠された「下描き」や「塗りつぶされた別の絵」
解説:画家たちはキャンバスを再利用するため、あるいは気に入らない箇所を隠すために、元の絵の上から別の絵を重ねて描くことがあります。X線は、その「隠蔽」を暴きます。もし、あなたが今描いているその風景画を数百年後に誰かが透かして見たとしたら。……あなたが背景の黒で塗りつぶして消したはずの、「あの時の表情」まで見られてしまうのですよ。

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◆質問④
デッサンに使われる「木炭」は、木を蒸し焼きにして作ります。では、さらに深い黒色を求めて作られた「アイボリーブラック」という絵具の、本来の原料は何でしょうか。

◆答え・解説
答え:象牙(または動物の骨)
解説:かつて最も美しい黒とされたこの絵具は、象牙を密閉容器で焼き砕いたものでした。現在は動物の骨(ボーンブラック)が主流ですが──そこに「別の骨」が混ざることがなかったと言い切れるのでしょうか。
あなたが影を描くために塗りつぶしているその真っ暗な空間。そこには、光を奪われた生き物たちの怨念が、粉々に砕かれて塗り込められているのかもしれません。


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◆問題⑤
19世紀の画家ジェリコーは、大作『メデューズ号の筏(いかだ)』を描く際、極限状態の人間の姿を再現するために、ある徹底したリアリズムの手法をとりました。彼がアトリエに持ち込み、観察対象としたものは何でしょう。

◆答え・解説
正解:本物の人間の遺体(切断された手足など)
彼は病院から譲り受けた遺体の一部を腐敗するまで置き、その色や質感を観察し続けました。
作品に漂う圧倒的な絶望感は、単なる想像力ではありません。キャンバスを前に筆を握る彼の背後には、常に死臭を放つ「モデル」たちが、音もなく転がっていたのです。

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◆問題⑥
大正時代の画家・岸田劉生(きしだりゅうせい)は、娘の麗子をモデルにした『麗子像』を数多く描きました。成長するにつれ、絵の中の麗子の顔は次第に人間離れし、不気味な笑みを浮かべるようになります。彼が執拗に娘を描き続けた、美術史上の目的を答えなさい。

◆答え・解説
正解:内なる美(写実を超えた存在感)の追求
彼は娘を愛するあまり、その存在を永遠にキャンバスへ閉じ込めようとしました。
奇妙に歪んだ顔、こちらを射抜く視線。晩年の麗子像が人間というより「怪物」に近く見えるのは、彼が娘の魂を絵の中に引きずり込み、凝縮しようとした結果だという説があります。


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