因縁の魔王陛下と聖女令嬢~溺愛の呪いが解けない~
兵士はすがるようにしてカインに畳み掛ける。
「王子様、ご忠告に参りました……我が国サイベリアはデヴィール国に侵略されて、まもなく実効支配されます」
「デヴィール国……アゼル様が?」
「はい、宣戦布告もなく奇襲でした……次はウィリアム国に侵攻すると思われます」
それを聞いて衝撃を受けたのは誰よりもエリーゼだった。あのアゼルが、人質となったエリーゼを放って侵略戦争とは、どういう了見なのか。
カインは至って冷静だが深刻そうに眉をしかめると、周囲にいた自国の兵に命じる。
「彼を保護して治療してあげて。僕はすぐに城へ帰るから」
それだけを告げると、カインは身を翻してエリーゼの元へと歩んでいく。エリーゼは不安そうに青い瞳を揺らしながらカインを見つめる。
「ごめん、今日はもう帰ろう。これから軍事会議を行うから」
不穏を感じたエリーゼは、ただ黙ってカインの後を付いていくしかなかった。
もしかしたらアゼルは、エリーゼを取り戻すために侵攻している可能性もある。
(バカなアゼルなら、ありえる)
そんな淡い期待を信じて、エリーゼはカインと共に馬車に乗り込む。
その頃、ウィリアム国の隣国のサイベリア国では。
王城の前で大勢の軍隊を前にして対峙するのは、漆黒の髪と瞳、黒衣のマントを纏ったデヴィール国の王。その傍らには金髪碧眼の白いドレスの聖女。
自国の軍隊を城下町に残して、アゼルとセレンはたった二人で最後の砦である王城まで侵攻してきた。
アゼルは血の滴る漆黒の長剣の刃先を正面の敵陣に向ける。
「貴様らを蹴散らせば、サイベリア国を落としたも同然だな。行くぞ、セレン」
「は、い……」
アゼルがセレンの肩を強く抱いたのを合図に、セレンは聖女の能力『強化』を発動させる。
しかしセレンは青の瞳に涙を浮かべて顔を伏せて、目の前の悲惨な現実から目を逸らしている。
(いや……私は世界征服になんて、手を貸したくない……)
アゼルの脅迫に抵抗できない人質のセレンは、彼の『武器』となって加担するしかなかった。
人として扱われないセレンはアゼルから愛されもしない。最強の聖女という都合のいい武器でしかなった。
(誰か助けて……カイン様……)
経路から考えて、この国の次に侵攻するのはウィリアム国。セレンは婚約者であるカインを思い浮かべて、彼を手にかけるかもしれない恐怖と絶望に身を震わせた。
「王子様、ご忠告に参りました……我が国サイベリアはデヴィール国に侵略されて、まもなく実効支配されます」
「デヴィール国……アゼル様が?」
「はい、宣戦布告もなく奇襲でした……次はウィリアム国に侵攻すると思われます」
それを聞いて衝撃を受けたのは誰よりもエリーゼだった。あのアゼルが、人質となったエリーゼを放って侵略戦争とは、どういう了見なのか。
カインは至って冷静だが深刻そうに眉をしかめると、周囲にいた自国の兵に命じる。
「彼を保護して治療してあげて。僕はすぐに城へ帰るから」
それだけを告げると、カインは身を翻してエリーゼの元へと歩んでいく。エリーゼは不安そうに青い瞳を揺らしながらカインを見つめる。
「ごめん、今日はもう帰ろう。これから軍事会議を行うから」
不穏を感じたエリーゼは、ただ黙ってカインの後を付いていくしかなかった。
もしかしたらアゼルは、エリーゼを取り戻すために侵攻している可能性もある。
(バカなアゼルなら、ありえる)
そんな淡い期待を信じて、エリーゼはカインと共に馬車に乗り込む。
その頃、ウィリアム国の隣国のサイベリア国では。
王城の前で大勢の軍隊を前にして対峙するのは、漆黒の髪と瞳、黒衣のマントを纏ったデヴィール国の王。その傍らには金髪碧眼の白いドレスの聖女。
自国の軍隊を城下町に残して、アゼルとセレンはたった二人で最後の砦である王城まで侵攻してきた。
アゼルは血の滴る漆黒の長剣の刃先を正面の敵陣に向ける。
「貴様らを蹴散らせば、サイベリア国を落としたも同然だな。行くぞ、セレン」
「は、い……」
アゼルがセレンの肩を強く抱いたのを合図に、セレンは聖女の能力『強化』を発動させる。
しかしセレンは青の瞳に涙を浮かべて顔を伏せて、目の前の悲惨な現実から目を逸らしている。
(いや……私は世界征服になんて、手を貸したくない……)
アゼルの脅迫に抵抗できない人質のセレンは、彼の『武器』となって加担するしかなかった。
人として扱われないセレンはアゼルから愛されもしない。最強の聖女という都合のいい武器でしかなった。
(誰か助けて……カイン様……)
経路から考えて、この国の次に侵攻するのはウィリアム国。セレンは婚約者であるカインを思い浮かべて、彼を手にかけるかもしれない恐怖と絶望に身を震わせた。