因縁の魔王陛下と聖女令嬢~溺愛の呪いが解けない~
 そんなエリーゼの横に立つアゼルが急に一歩前に出てきた。

「ならば良い機会だ。オレたちと貴様らの合同で結婚式を挙げようではないか」
「え? アゼル!?」

 アゼルの唐突な提案にエリーゼは驚きの声しか出ない。確かに結婚式は挙げていなかったが、全く手順を踏んでいない気がする。
 それでも国王として国交を深めようとするアゼルの提案は素直に素晴らしいものだと思う。
 さらにアゼルは後ろを振り返って話を繋げる。

「そうだ。貴様も一緒に式を挙げるとしよう」

 アゼルとエリーゼの背後には、護衛として同行した軍隊長・アーサーが控えている。
 アーサーの返事よりも早く、急展開に驚いたエリーゼがアーサーに問いかける。

「え!? アーサーさんとレミアルさんって、もうそこまで!?」
「……はい、婚約してます。しばらく戦も無さそうですし、そろそろ私も身を固めて良い頃かと……」

 照れて歯切れが悪いアーサーなんて初めて見た。今までは戦の事しか頭にない戦バカだったのに、今のアーサーの心を占めているのはレミアルだった。
 ちなみにロイアルにも恋人ができたらしい。新しく副将軍になった年上の女性で、レミアルに似たしっかり者と聞いて納得した。

 そうして強引に三組の合同結婚式の予定を取り付けると、アゼル一行はデヴィール国へと帰って行った。
 玉座の間のカインとセレンは、今までの事を笑い話にして今後の事を語り合っている。

「それにしても驚いたよ。アゼル様はエリーゼ様の言いなりなんだね。呪いでも使ったのかな」
「私もそう思って密かに確認してみたんだけど、アゼル様にもお姉様にも呪いは感じなかったわ」
「セレンが言うなら確実だね」

 大聖女であるセレンは呪いを感知できる。しかしアゼルにもエリーゼにも呪いはかかっていないと判断した。
 ……つまり、二人にかかっていた『溺愛の呪い』は、今は解けてしまっている。

 あの時、戦場でエリーゼとセレンが放った合わせ技『浄化と治癒』の効力により、アゼルとエリーゼにかけられた溺愛の呪いまで一緒に消え去っていた。
 しかし、当の本人たちはそれに気付いていない。真実を知らない二人の『溺愛の呪い』という自己暗示は永遠に終わらない。
 結局はエリーゼもアゼルも、誰もかれもがみんな『バカ』なのであった。

 エリーゼとアゼルを繋ぐ溺愛の呪いは、真実の愛へと変わっていた。
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