恋を知らないきみへ
9 ハイタッチ
午前十時。
予定していた通り、私は担当している若い夫婦との最終打ち合わせのため、営業所の応接室へ入った。
「お待たせしました」
ドアを開けると、小さな女の子がお母さんの膝の上から「こんにちは」とぺこりと頭を下げる。
思わず笑顔になって、私も同じように頭を下げた。
「こんにちは」
テーブルの上には間取り図と見積書。
何度も打ち合わせを重ねてきたご夫婦だ。
今日は契約をするかどうか、最後の確認の日だった。
ご夫婦の顔に緊張が浮かんでいるのもよく分かる。
「ご質問でも、不安なことでも、なんでも構いません。もしありましたら、どんなことでも話してください」
そう促すと、ご主人が間取り図へ目を落とす。
「正直、もうほとんど決めてるんです。でも最後だけ……」
「はい」
「このランドリールーム、本当に必要なのかなって思っていて」
その言葉に、私はすぐ答えを返さなかった。
営業だからといって、「必要です」と押せばいいわけじゃない。
むしろ、押した瞬間に、お客様は迷い始めることを私は知っている。
「ちなみに、ご夫婦が家を建てようと思った一番の理由って何でしたっけ?」
改めて尋ねると、二人は顔を見合わせて笑った。
「やっぱり、娘ですね」
「この子が制限なく自由に動き回れる家に住みたくて」
女の子はまだ三歳くらいだろうか、話していることの意味も分からずニコニコ笑っている。
……可愛い。
その笑顔を見て、私も自然と口元が綻んだ。
予定していた通り、私は担当している若い夫婦との最終打ち合わせのため、営業所の応接室へ入った。
「お待たせしました」
ドアを開けると、小さな女の子がお母さんの膝の上から「こんにちは」とぺこりと頭を下げる。
思わず笑顔になって、私も同じように頭を下げた。
「こんにちは」
テーブルの上には間取り図と見積書。
何度も打ち合わせを重ねてきたご夫婦だ。
今日は契約をするかどうか、最後の確認の日だった。
ご夫婦の顔に緊張が浮かんでいるのもよく分かる。
「ご質問でも、不安なことでも、なんでも構いません。もしありましたら、どんなことでも話してください」
そう促すと、ご主人が間取り図へ目を落とす。
「正直、もうほとんど決めてるんです。でも最後だけ……」
「はい」
「このランドリールーム、本当に必要なのかなって思っていて」
その言葉に、私はすぐ答えを返さなかった。
営業だからといって、「必要です」と押せばいいわけじゃない。
むしろ、押した瞬間に、お客様は迷い始めることを私は知っている。
「ちなみに、ご夫婦が家を建てようと思った一番の理由って何でしたっけ?」
改めて尋ねると、二人は顔を見合わせて笑った。
「やっぱり、娘ですね」
「この子が制限なく自由に動き回れる家に住みたくて」
女の子はまだ三歳くらいだろうか、話していることの意味も分からずニコニコ笑っている。
……可愛い。
その笑顔を見て、私も自然と口元が綻んだ。