あなたを愛しているから
「わらわが全員、始末しても良いのじゃよ」
「馬鹿言え。龍神にそんなことをさせられるか」
「良い良い。……よもや、そのような綺麗事で片付けられるような生ではなくなってしまっていると、そなたは自分で理解しているじゃろう?」
「……」
手段は選んでいられないのは、事実だ。
だがそれは、何をしてもいいという意味じゃない。
「……もう少し、待て。人のことは、人の手で、人の理でどうにかするべきだ。お前もそう、言っていたろう」
「そうじゃの」
「─なら、余計な手出しは無用だ」
今回、琉琉に傷を治してもらったこと自体が、本来の筋書きから外れている。彼女との出会いのズレが生み出したのか、これなら、前の時のように麻痺が残ったりすることはないだろう。
この繰り返される呪われた人生で、いちばん厄介なのは、”心”を得てしまったことだ。
諦めて、流されているだけの人生ならばよかったものを、彼女に出会って、刻まれてしまった。
母を知らぬ女に滅多刺しにされて殺された最初は、次から病死となった。
悪政で犠牲になった家族のような貧民街の人間は後を立たなかったが、戦争で犠牲になるものは減った。
ほんの少しのズレ、自分に声をかける人間、日常の些細な出来事すらも覚えたまま繰り返される人生は、神狼を疲労させるには容易いことだった。
(琳……)
名前を呼ぶと、柔らかく笑った。
秘密があると隠さず、多才を持ったその娘は、神狼と同じ目線で国を眺めてくれる女性だった。

