世にも奇妙な買取屋

エキストラ


 ホラー映画の撮影に、私たちのクラス全員がエキストラとして出演することになった。

 演じるのは、『サイコパスの女子高生に殺される同級生たち』。

 もちろん本当に殺されるわけではない。

 特殊メイクで傷を作り、血のりを流して倒れるだけ。

 セリフもない端役だけど、映画の撮影現場に入れるなんて滅多にない機会だ。

 撮影当日、会場となった廃校へ向かうと、教室はすでに惨劇の舞台へと変わっていた。

 床や壁には本物と見間違うほどの血痕が飛び散り、机や椅子は無残に倒されている。

 撮影用の制服に着替えると、メイクさんたちが腕や首、顔に次々と傷を描いていった。

「えっ、これ本物みたい!」
「私の首の傷、ヤバくない!?」
「グロいけど、めっちゃテンション上がる!」
「こんなの、本当に事件が起きても気づかれないかもね」

 そんなクラスメイトの冗談にスタッフたちも笑う。

 やがてメイクが終わり、監督が私たちを集めた。

「主演が入ってきたら悲鳴を上げて逃げてください。刺されたら倒れて、カットがかかるまで絶対に動かないこと。それだけです」

 撮影が始まる。

 主演の俳優がナイフを振りかざし、順番に私たちへ襲いかかっていく。

 もちろんナイフは、刃が引っ込む小道具だ。

 刺された演技をして床へ倒れるたび、スタッフが満足そうにうなずく。

「いいね! そのまま、そのまま!」

 私は息を殺し、死体を演じ続けた。

 教室中には、血まみれのクラスメイトが折り重なるように倒れている。

 私のすぐ隣でも首から大量の血を流し、白目をむいたまま動かない人がいた。

 これだけ死体が転がっていたら、誰もすぐには気づかない。

 本物が、一つだけ混ざっていても、ね。


〈解説〉

♦️語り手の『映画の撮影現場に入れるなんて滅多にない機会だ』という一文がちょっと気にならない?

♣️そう? 映画に出れることを純粋に楽しみにしているようにも思えるけど……?

♦️ほら、よく見て。語り手は、クラスメイトたちと傷メイクに興奮したりする様子が一度も描かれていないわ!

♣️じゃあ、語り手が孤立していて、この状況を利用して誰かを殺めたってこと?

♦️特殊メイク、血のり、死体役。リアルなホラー映画の撮影現場は、誰にも気づかれずに本物の死体を紛れ込ませるには、あまりにも都合が良すぎる舞台だったみたいね。
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