追放された搾りカス聖女は、第二の人生を謳歌する。なのに、激重騎士隊長が放してくれません! なんであんたぁ、ここにいるんだべ!?
早朝、畑仕事の最中、トマトの葉っぱを見て手が止まる。
緑色の葉っぱが茶色く変色し始めていた。それに見たこともない虫が、トマトを食い荒らしている。
黒色の丸い虫で、鋭い牙を持っていた。
「じぃちゃん、何か知らん虫が、トマトを食ってるべ!」
隣で収穫していたじぃちゃんが、こちらを覗き込んだ。
「あぁ、またこれか。実はなぁ、数年前から苗木や農作物を食い荒らしてるんじゃ。駆除しても駆除しても、どんどん増えてるんだべ」
じぃちゃんはやれやれと肩をすぼめる。
聖女だった時、王都周辺の農地へは、土壌浄化や豊穣のために、聖魔法をかけに回っていた。
しかし、この村のような田舎には、手が回らない。そうなると、浄化していない土壌から、害虫が発生してもおかしくないかもしれない。
(……私に魔力があったら……)
その時、手のひらに懐かしい感覚が走る。温かいような、むずむずするような。
なんとなくトマトの葉に向かって、魔法を振り注ぐ仕草をすると、手のひらから光が溢れ出した。
それは紛れもなく、聖魔法だった。
茶色く変色していた葉っぱは、見る見るうちに張りのある瑞々しい葉っぱに変わる。
黒い虫も果てて、ポロポロと下に落ちていった。
「え? なんでぇ!? 私、搾りカスだったんじゃないべぇ!?」
私はパニックになり頭を抱える。
「どうすっべ、どうすっべ、どうすっべ」
魔力が戻ったとなると、また神殿に連れ戻されてしまうかもしれない。
(それは絶対に嫌じゃ、神殿には戻りたくないべ……っ)
「コレットや、落ち着くんじゃ。今日は幸い誰も見てないべ。隊長さんに見つからんよう、もう魔法を使うんじゃないぞ」
私が震えていると、それを見ていたじぃちゃんが真剣な顔で私の顔を覗き込む。
「……うん」
これからは絶対に使わない。ロヴァルト様に見られたら、きっと神殿に連れ戻されてしまうだろうから。
私は震える手を、ぎゅっと握りしめた。
その後、農作業を続けていると、ロヴァルト様が慌てた様子でやってきた。
「テリー殿、……ここ……コレット殿、遅くなってすまない」
額に汗が光り、その瞳には焦りが見えた。
「いえいえ、隊長さん。大丈夫ですぞ。……何かありましたかな?」
「いや、妙な噂を小耳に挟んだ。……それの確認をしていた」
「噂ですか……?」
私が聞き返すと、眉間に皺を寄せたロヴァルト様は、こちらをチラリと見たが、それ以上は何も語らなかった。
(何だべ? 言えんようなこと……?)
ロヴァルト様の顔は相変わらず厳つい。
ただ、不思議なことに、最近はそんなに怖いとは思わなくなった。
今までと違う一面を見るようになったからだろうか?
「では、作業に入る。テリー殿、私は何をすればよいか?」
「あぁ、そうじゃな。今日はトマトの収穫を頼むべな」
「承知した」
ロヴァルト様は腕まくりをし、筋肉質の太い腕をトマトの方へ伸ばす。そして、手際よくトマトを収穫する。
(……忘れかけてたけど、本業は騎士隊長のはずなのに、何でうちで野良仕事してんべ?)
「ん? テリー殿、このトマトは何だ?」
ロヴァルト様は一つのトマトをこちらに差し出した。
見ると、普通のトマトより大きい。ロヴァルト様の大きな手いっぱいに収まっている。
こんなトマト今まで見たこと……。
(……あ、私の聖魔法の影響じゃ……っ!?)
昔、力を注ぎ過ぎて、農作物を大きくしてしまったことを思い出した。しかもその時に、護衛をしてくれたロヴァルト様に目撃されている。
(ま、まずいべ、ロヴァルト様に、魔力が戻ったことが知られてしまう……)
「そそそれは、そういう種類のトマトなんです! 新種のドデカトマトと言いまして……っ」
私は大きく手を振りながら説明し、どうにか誤魔化す。
ロヴァルト様はこちらを一瞥した後、手に持ったトマトをまじまじと見つめる。
「なるほど、新種か」
納得したように、呟いた。
(よかった……)
ほっと胸を撫で下ろしていると、頭上から微かな声が降ってきた。
「安心するといい。誰にも言わん」
(……え?)
顔を上げると、ロヴァルト様は既に作業を再開していた。
(今のって……、もしかして……?)
今の言葉が気になったが聞くことはできず、しばらくロヴァルト様の横顔を見つめていた。
緑色の葉っぱが茶色く変色し始めていた。それに見たこともない虫が、トマトを食い荒らしている。
黒色の丸い虫で、鋭い牙を持っていた。
「じぃちゃん、何か知らん虫が、トマトを食ってるべ!」
隣で収穫していたじぃちゃんが、こちらを覗き込んだ。
「あぁ、またこれか。実はなぁ、数年前から苗木や農作物を食い荒らしてるんじゃ。駆除しても駆除しても、どんどん増えてるんだべ」
じぃちゃんはやれやれと肩をすぼめる。
聖女だった時、王都周辺の農地へは、土壌浄化や豊穣のために、聖魔法をかけに回っていた。
しかし、この村のような田舎には、手が回らない。そうなると、浄化していない土壌から、害虫が発生してもおかしくないかもしれない。
(……私に魔力があったら……)
その時、手のひらに懐かしい感覚が走る。温かいような、むずむずするような。
なんとなくトマトの葉に向かって、魔法を振り注ぐ仕草をすると、手のひらから光が溢れ出した。
それは紛れもなく、聖魔法だった。
茶色く変色していた葉っぱは、見る見るうちに張りのある瑞々しい葉っぱに変わる。
黒い虫も果てて、ポロポロと下に落ちていった。
「え? なんでぇ!? 私、搾りカスだったんじゃないべぇ!?」
私はパニックになり頭を抱える。
「どうすっべ、どうすっべ、どうすっべ」
魔力が戻ったとなると、また神殿に連れ戻されてしまうかもしれない。
(それは絶対に嫌じゃ、神殿には戻りたくないべ……っ)
「コレットや、落ち着くんじゃ。今日は幸い誰も見てないべ。隊長さんに見つからんよう、もう魔法を使うんじゃないぞ」
私が震えていると、それを見ていたじぃちゃんが真剣な顔で私の顔を覗き込む。
「……うん」
これからは絶対に使わない。ロヴァルト様に見られたら、きっと神殿に連れ戻されてしまうだろうから。
私は震える手を、ぎゅっと握りしめた。
その後、農作業を続けていると、ロヴァルト様が慌てた様子でやってきた。
「テリー殿、……ここ……コレット殿、遅くなってすまない」
額に汗が光り、その瞳には焦りが見えた。
「いえいえ、隊長さん。大丈夫ですぞ。……何かありましたかな?」
「いや、妙な噂を小耳に挟んだ。……それの確認をしていた」
「噂ですか……?」
私が聞き返すと、眉間に皺を寄せたロヴァルト様は、こちらをチラリと見たが、それ以上は何も語らなかった。
(何だべ? 言えんようなこと……?)
ロヴァルト様の顔は相変わらず厳つい。
ただ、不思議なことに、最近はそんなに怖いとは思わなくなった。
今までと違う一面を見るようになったからだろうか?
「では、作業に入る。テリー殿、私は何をすればよいか?」
「あぁ、そうじゃな。今日はトマトの収穫を頼むべな」
「承知した」
ロヴァルト様は腕まくりをし、筋肉質の太い腕をトマトの方へ伸ばす。そして、手際よくトマトを収穫する。
(……忘れかけてたけど、本業は騎士隊長のはずなのに、何でうちで野良仕事してんべ?)
「ん? テリー殿、このトマトは何だ?」
ロヴァルト様は一つのトマトをこちらに差し出した。
見ると、普通のトマトより大きい。ロヴァルト様の大きな手いっぱいに収まっている。
こんなトマト今まで見たこと……。
(……あ、私の聖魔法の影響じゃ……っ!?)
昔、力を注ぎ過ぎて、農作物を大きくしてしまったことを思い出した。しかもその時に、護衛をしてくれたロヴァルト様に目撃されている。
(ま、まずいべ、ロヴァルト様に、魔力が戻ったことが知られてしまう……)
「そそそれは、そういう種類のトマトなんです! 新種のドデカトマトと言いまして……っ」
私は大きく手を振りながら説明し、どうにか誤魔化す。
ロヴァルト様はこちらを一瞥した後、手に持ったトマトをまじまじと見つめる。
「なるほど、新種か」
納得したように、呟いた。
(よかった……)
ほっと胸を撫で下ろしていると、頭上から微かな声が降ってきた。
「安心するといい。誰にも言わん」
(……え?)
顔を上げると、ロヴァルト様は既に作業を再開していた。
(今のって……、もしかして……?)
今の言葉が気になったが聞くことはできず、しばらくロヴァルト様の横顔を見つめていた。