追放された搾りカス聖女は、第二の人生を謳歌する。なのに、激重騎士隊長が放してくれません! なんであんたぁ、ここにいるんだべ!?
 神殿にいた時はロヴァルト様のことを、ただの怖そうな騎士隊長としか認識していなかった。

 いつもこちらを睨んでいたし、私のような田舎者の聖女なんかを、護衛するのが嫌なんだろうと思っていた。

 だけど、神殿で私が過労で倒れそうになった時、いつも助けてくれたのはロヴァルト様だった。
  
 なぜかこの村にやって来て、トマトをバクバク食べ、野良仕事は器用にこなす。じぃちゃんの手伝いや話相手になってくれて、私の料理も何杯もおかわりする。

 それを見ていたら、そんなに嫌われていないような気がしてきたんだ。

「……いつまでこの村にいんべかな?」

 この村にいるのが当たり前になってきていて、いなくなったら、少し寂しいような気もする。


 ――コンコン。
 その時、玄関のドアがノックされた。

「あれ? 誰だぁ?」

 今じぃちゃんは、茶飲み友達のハンスのじぃちゃんの所へ行っていて、家には私一人だ。

 鍋の火を止めて、私は慌てて玄関の扉を開ける。

「はい? どちら様で――っ!?」

 扉の外には二人の人物が立っていた。その姿に、息を呑む。
 私はドアノブを持ったまま、動けなくなってしまった。


「お久しぶりですな、コレット」

 その見慣れた人物は、柔和な笑みを浮かべている。その後ろには護衛騎士が控えていた。

「……し、神官長様!? ど、どうして、こちらに……?」 

「あぁ、それはあなたを迎えに来たんですよ」

 神官長の言葉に耳を疑う。


「え……、迎え……?」

 神官長が自らこんな田舎に来るなんて、普通ではない。嫌な予感がする。

(魔力のことがバレたべ……? も、もしかして、ロヴァルト様が……? いや、でも、誰にも言わないって言ってくれたべ……)

 私はロヴァルト様への疑いを振り払うように、首を振る。
 まだ、バレたとは決まっていない。とりあえず、様子を見た方がいい。
 私は気持ちを落ち着かせる。

「えっと……、迎えと言いましても、私にはもう魔力はありませんので、戻れませんが」

「あぁ、そうですな。しかし、魔力がなくてもできることは沢山ありますよ。……あなたはよく働いてくれました。是非、神殿へ戻ってきてほしいのです」

 神官長の言葉が引っ掛かる。私はベルニカ達に仕事を押し付けたという話だったが。

「よく働いてって、私は何もしていなかったはずでは?」
 私が冷めた視線を送ると、神官長は罰の悪そうな顔をする。

「そ、それが、あなたを追放してから、仕事は全てあなたが行っていたことが分かりましてね……」
「……第一聖女ベルニカがいますでしょう? 彼女は優秀ですよ」
「そ、それが……っ、あなたに……、その」
 神官長は視線を泳がせ、言葉を濁す。

「何でしょうか? 神官長様? はっきりおっしゃってください!」
 私が問いただすと、神官長は観念したように口を開く。

「実は……聖女ベルニカは仕事を全て放棄し、自室に引きこもっているんですよ……」

「はっ!? 引きこもってる!?」
 
「えぇ。あなたを連れ帰るまで、部屋から出ないと言っていましてね……」
 神官長が私に説明しながら、頭を抱えている。

(はっ!? なんてことだべぇ!?)

 先日、旅人が話していた魔物が結界を突破した理由は、ベルニカがサボっていたからってことか。

「こんなこと急に言われましても困ります! もう私は聖女ではありませんので、どうにかベルニカを説得してください!」

「そこを何とか、頼みますよ、コレット」

「お断りします!」

 やっと解放されたというのに、また神殿でこき使われるなんて、考えただけで震えが出る。

 私が頑なに断っていると、神官長の顔が変わる。

「そうですか……。あなたがそこまで言うのなら、仕方ありません。……最終手段ですよ……」

(最終手段……?)
 
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