JEWEL
「よし、帰るか」
お互い食事を終えて、席を立つ。
「ちょっ、斎さん!?」
「何?」
焦ったように声を出してついてきた澪を振り返ると
「なんで伝票持ってくの!?」
俺の腕を掴んで、困惑の表情を浮かべてる。
……っとに、馬鹿な女だな。
「いっ!?」
ペチッと澪の額にデコピンをすると、痛みに顔を歪める。
ちょっと涙目になった澪を見下ろして、小さくため息をつく。
「ばーか。
年下に、まして女なんかに、まじで奢らせるかよ」
目を見開いて驚いた澪を置いて、会計を済ませて外へ出た。
「まっ、待って斎さん!!」
我に帰ったように慌てて追い掛けてきた澪。
止まってなんかやんねぇ。
だけどちょっとだけ、歩調をゆるめてやる。
「斎さん……?」
必死に追い掛けきた澪が面白くて、思わず笑った。
俺を追い抜いて前に回った澪は
不思議そうに俺を見上げる。
こいつ、天然かよ。
走ったせいで赤く染まった頬と上目遣いに
阿呆みたいに開けっ放した口。
「そんな顔すんじゃねーよ」
キスしたくなんじゃん。
とまでは、言わなかったけど
何故か澪は顔を赤らめた。

