仮恋愛
いつもの時間の午後12時30分。
見計らってはや、30分。
可笑しいなー?
やってこないと思って、渡り廊下の先、目の前の職員室に直行しようとしたら、後頭部をガツッとなにかが掠める音がした。
「何してる。
スナイパーごっこはまだ、早いぞ?」
「そんなことはしてません!!」
「俺を追いかけるという異常な執着ーーー変人の域を超えてサイコパスか何かの間違えかな?」
「先生が変な女の子に引っかからないか、チェックしているだけです!!」
「それが余計なお世話だって言ってるだろ」と、軽く頭をバインダーでペチリと叩かれた。
「本当は、このバインダーでお前の異常な執着をへし折ってやりたいんだが……。」って。
下々の奴隷を観る王子様のような、蔑んだような目線を向けられるも、私は負けじと顔を上げて先生と向き合う。
「そんな事なら、私と付き合ってほしいなぁー。
そしたら、監視する必要もないしね!!」
と、月先生に笑顔で、ちょっと可愛く、私は言った。
私の名前は、「花見姫」。
高校2年生の女子生徒。
在学中に私は、恋をしています。
お相手はなんと三十歳で、クールな真っ黒なスーツを着こなした「暁 月」先生!!
英語教師、そしてスナイパーみたいな鋭い視線が女子生徒に人気だったり?
とにかく、顔がすごく美しくてーーー誰にも頼らないような強さを持つ、芯の強いイケメンさん。
私はそんな彼が、大好きになってーーー毎日月先生の後を追っています!!
「じゃあ、条件を出してやろう」
鋭いしなやかな目線で、私を見つめるその目は愛を試されてるみたいだ!!
よし、どーんと来い!!
「お前だけで、今年の全学年の英語のテストを全部作ってみろ……それができたら付き合ってやるよ」
え!?
いきなり無理難題!?
私、英語が一番苦手なのに……。
うーんと、頭を悩ませて手のひらを打ってみせた。
「分かった!!abc問題を作って、なぞるのがうまかった人が高得点を取るっていうのは?」
「嘘に決まってんだろ。おバカ」と、バインダーでまた頭を軽く叩かれた。
そして、そっぽを向かれるように、夜の月の上を滑るかの黒猫の如く、月先生に逃げられる。
これが私の日常。
そして、これが、私の唯一の幸せ。