その黒曜、あまりに気高く、あまりに最狂

泥に咲く黒百合

地下格闘技場の最奥。

スポットライトに照らされた巨大なリングの上で、二代目総長・神代はポケットに手を突っ込んだまま、ゆっくりと振り返った。

鉄の扉を開け、悠然と歩み出てきた黒曜の総長・レイの姿を、その鋭い三白眼がじっと捉える。

腰まである艶やかな黒髪、跳ね上げたキャットラインの妖艶なメイク、そして肩に羽織った鳳学園のブレザー

薄暗い地獄のような空間の中で、彼女の放つ圧倒的な気品と覇気は、まるで泥の中に一輪だけ咲く黒百合のようだった。

神代は一瞬だけ呆気に取られたように目を見開いた後、ゾクゾクとした笑みを浮かべて髪をかき上げた

「……金城の奴から『黒曜を、あの敬語の女を必ず殺せ』ってこの座を託された時は、どんな化け物かと思ったぜ。だけどよ……いざ会ってみりゃ、たまんねえな」

神代はリングのロープに肘をかけ、レイをねめつけながら、どこか歪んだ色気を孕んだ声で笑う

「おい、俺の『姫』にならないか? お前みたいな最高に強くて気高い女、泥臭いヤンキーのトップにしとくのはもったいねえよ。俺の女になるなら、鳳の街ごと丸ごと愛してやるぜ?」

その下品な口説き文句が響いた瞬間、リング下の蓮が

「テめぇっ……!」

と拳を握りしめて飛びかかろうとした。

だが、その前に颯太がすっと蓮を片手で制した

「あはは、言われてやんの」

颯太は頭の後ろで手を組み、いつものチャラいタメ口で神代を冷たく見下ろした。

「おい二代目、うちのレイさんは誰の指図も受けないし、誰のモノにもならないよ? 振られた腹いせに泣き出すんじゃねーぞ」
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