君を忘れるための春。
――東京に置いてきた、私の、一番痛くて美しい初恋の記憶。
「……次は、京都。京都です」
車内に響き渡るアナウンスの声に、私はハッと目を開けた。
新幹線がゆっくりとホームに滑り込んでいく。
窓の外に広がるのは、東京とは違う、どこか厳かで古い街並み。
私はもう一度、キャリーケースの取っ手を強く握りしめた。
二人の前から逃げ出した私は、この京都の街で、もう一度前を向いて歩き出すことができるのだろうか。
まだ見ぬ新しい生活への不安を抱えながら、私は京都の地に、一歩を踏み出した。