結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 恋をするのが、こんなに苦しいなんて知らなかった。

 彼の笑顔を見るだけで嬉しくなるのに、その優しさに触れるたび胸が痛む。

 醜い嫉妬も、叶わない願いも、決して知られたくない。

 この関係は、初めから終わることが決まっている。だから、これ以上辛くなる前に、もっと好きになってしまう前に、彼から離れなければならない。

――そう決めたはずだったのに。

「……外堀を埋めようと思ったが、逆効果だったか」

 あまりにも近くに彼の低い声が聞こえて、透子(とうこ)は顔を上げた。次の瞬間、手首を掴まれる。

(じん)さん?」

 逃がさないというように、彼の指が強く透子の手を包み込む。真っ直ぐ射抜くような視線に、透子は息をのんだ。

「どうすれば、透子は俺と一緒にいてくれる?」

 まるで透子を失いたくないかのような焦りを感じて、胸が激しく揺れる。

「俺から離れるのは許さない」

 次の瞬間、視界が彼の影に覆われた。

「ん……」

 最初、何が起きたのかわからなかった。

 けれどすぐに、自分が迅にキスされているのだと理解する。
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