結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 香織は明るく、自分にも他人にも素直な人だ。そんな魅力を受け止めてくれる相手は、きっとどこかにいる。

 そのたったひとりとの出会いを、全力で支えよう。透子は改めてそう心に決めた。

 面談を終え、オフィスへ戻ってきた透子に、受付担当の同僚が声を掛けてきた。

「少し前に透子さんに来客があったんだけど、心当たりある?」

「いえ、特には」

 透子は軽く首を傾げる。今日は香織以外カウンセリングの予定はなかったはずだ。

「三十代くらいの男性だった。お約束も入ってないし、名乗らなかったので丁重にお引き取りいただいたわ」

「そう、ありがとう」

 マリアージュ・アクシアでは、カウンセラーが事前に把握している来訪者しかオフィスへ入れないよう徹底している。所長が有名人なこともあり、興味本位で訪ねてくる人間は少なくないからだ。

 今回もその類かもしれない。透子はそれ以上深く考えることなく、自席へ戻った。

 デスクで小休憩を取っていると、スマートフォンが小さく震える。

 画面には、迅からのメッセージが表示されていた。

【何時ごろに上がれそうか。迎えに行く】

 初めての昼デートから半月。迅との仮交際は順調だ。
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