結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 透子が言い添えると、鈴谷は一瞬きょとんとしたあと、穏やかに笑った。

「所長からの期待が高い、か。そう言ってもらえるのは光栄だね。がんばらなきゃ――でも」

 鈴谷は言葉尻理を濁しながら、スマートフォンをテーブルの上に置いた。

「透子さん自身は、僕のことどう思ってる?」

 どこか様子をうかがうように問いかけられる。

「もちろん、頼れる先輩です」

 新人の頃、社内の仕組みを丁寧に教えてくれたのは彼だし、今も何かと気にかけてくれているのをありがたいと思っている。

 迷いなく答える透子に、鈴谷はさらに目を細めた。

「そっか、ありがとう」

 脱力したように、息をついてから、彼は少しだけ言葉を探すそぶりをした。

「でも、俺は……」

 正面から真剣なまなざしで見つめられたと思った――そのとき、違う方向からやけに強い視線を感じた。

 思わずそちらを見ると、カフェの扉が開くところだった。

(え、迅さん?)

 入ってきた迅は、透子と目が合うなり長い足でつかつかと歩み寄ってくる。あっという間にテーブルの傍らに立ち、ふたりを見下ろした。彼が纏っているのは、周囲の空気を重くするような圧だった。
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