結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 反抗心と怒りを湛えた真っ直ぐな瞳がこちらを睨んでいる。生まれてこの方、だれかにこんな目を向けられたのは初めてだった。しかし、不思議と怒りは湧かない。

 説明だけでもさせてほしいと食い下がってきた透子に根負けし、もう一度だけ時間を作る約束をする。

『俺の視野を広げる、有意義な話を聞けるんだろうな。期待している』

 わざと嫌味を口にすると、透子は初めて顔を強張らせた。どうやら迅に暴言を吐いてしまったと、ようやく気づいたらしい。さきほどまでの表情とのギャップが面白いと思った。

 仕事以外で女性とまともに向き合い、意見を交わしたのはずいぶん久しぶりだった。

 それから三日後、迅は再びマリアージュ・アクシアを訪れる。

 ビルのエントランスに入ると、透子が幼い子どもを連れた若い夫婦と談笑していた。迅に気づかず、楽しそうに話し込んでいる。

 しかたなく少し離れた場所で会話が終わるのを待っていると、透子がしゃがみこんで、幼い子どもの頭を撫でるのが見えた。その横顔は、花が綻ぶように美しく、不覚にも目を奪われた。
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