結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 『透子の交際相手です』なんて、堂々と宣言されたら誤魔化すのも不自然だし、交際しているのは事実ではあるからだ。

 もちろん、破局前提の婚活中というややこし事情は説明せず、口外は控えてほしいと頼んだ。鈴谷はそれを守ってくれているようだ。
 あれから早二週間、迅とは相変わらず頻繁に連絡を取り合っている。

 真剣交際に入ってからは前にも増してメッセージが頻繁に来るようになったし、電話で声を聞く機会も増えた。

(あれ……ていうか、ほぼ毎晩電話かけてくれてない?)

 考えてみたら会えない日は必ずと言っていいほど、迅と話している。忙しい中、気を遣わないでいいと言っても、《俺が透子と話したいから》と言って、譲らない。

(迅さんなりに、真剣交際っぽくしようとしてくれてるのかな)

 そんなことを考えながら、椅子に腰かけた瞬間、彼の声が蘇ってきた。

『――もう、他の男とふたりきりになるな』

 あの日、迅の車の助手席で聞いた低い声も、至近距離で見た表情も、乞うようでいて、どこかこちらを絡め取るような色気を帯びていた。

(や、やだ。仕事中になにを思い出しているの!)
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