結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 プレートに乗せられたガトーショコラは、艶があり、真っ白なホイップクリームが添えられていた。しっとりしたチョコレートの甘みとほのかな苦みが濃厚に広がり、ひと口食べただけで仕事の疲れがふっと抜けていくような美味しさだった。

 思わず頬を緩ませていると、迅は目を細めてこちらを見ていた。

「蕩けるような顔して、よっぽど美味いんだな」

「そうですね……甘い、です」

 迅の声と視線にこそ甘さを感じ、フォークを持つ手が途端にぎこちなくなる。彼とは何度も食事をしてきたし、中華まんを分け合ったことすらあるのに、最近はこうして見つめられるだけで、やけに恥ずかしくなる。

「えぇと、今日は付き合ってほしい場所があるんでしたよね、このあとはどちらへ?」

 落ち着かなくなった透子は、フォークを置き、アールグレーの入ったティーカップに手を伸ばした。

「ああ、指輪を買おうと思って」

 さらりと返ってきた言葉に、透子はきょとんと瞬きをした。

「指輪、ですか?」

「透子に贈る婚約指輪だ」

「こん……っ」

 あまりにも自然な口調で告げられ、透子は絶句する。動揺した拍子に手元のカップが揺れ、慌ててソーサーへ戻した。
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