結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 父親の急逝により予定より早く社長に就任した迅は、この一年半、社内の基盤づくりに奔走し、成果を上げてきた。若く優秀なうえ独身である彼のもとには、社内外からさまざまな思惑を含んだ縁談が寄せられていた。いわゆる政略結婚だ。

(それは、矢のような縁談が来ても無理はないよね)

 透子は彼の説明を聞きながら思わずうなずく。社会的地位に加えてこのルックスだ。彼をなんとかしてモノにしようと誘惑する女性が多いのも容易に想像できた。

 もしかしたら、各方面から結婚をゴリ押しされすぎて、逆に彼の中で結婚に対してのマイナスイメージが出来上がってしまったのかもしれない。

「俺は、だれかに利用されるのは御免だし、他人の力に頼らなくても会社を発展させる自信がある」

「それは、立派なお考えですが……」

 結婚したくない気持ちは痛いほどわかったが、なおさら迅が成婚退会を前提に透子と交際する意図が分からない。

「今、縁談の類はぜんぶ母に断ってもらっている。最初のうちは俺の意思を尊重してくれていたんだが、父の一周忌を過ぎたころから母まで『そろそろ結婚しなさい』と言い始めたんだ」
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