騎士団長は天才魔石職人を手放さない
 新作の魔石武具がアルバートの身体にすっかり馴染んだころ、騎士団長室に渋い顔をした文官が訪れた。


「アルバート、任務だ」


 差し出された書類には「アダムズ魔石工房」の文字があり、アルバートは眉をひそめた。

 そこには「アダムズ魔石工房で作成している兵器を、隣国が軍事利用するためスパイを送り込んできている」という内容が暗号で記されていた。


「本当か? 隣国とは和平交渉の真っただ中だというのに」

「お前に嘘をついてどうする」


 文官が肩をすくめた。


「偵察部隊から緊急案件だと上げられてきたから、持ってきてやったんだ。そこ、お前の御用達だろ」

「そうだが……いや、助かった。感謝する」


 アルバートは軽く頭を下げ、書類の文字をもう三度読む。

 その間に文官はポケットから携帯灰皿とマッチを取り出した。アルバートは差し出された灰皿に書類を折りたたんで突っ込み、文官がマッチで火をつけて書類を燃やす。

 灰皿から火が消えると同時に、文官は目礼して去っていく。

 アルバートは立ち上がり、訓練場へと向かった。

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