騎士団長は天才魔石職人を手放さない
 昼や夜の食事もイヴは抜きがちだったため、アルバートはできる限り片手間で食べやすいものを用意するようになった。それでも食べないときは、


「これ以上食事を放置するなら、俺が手ずから食べさせる。それでも食べないなら口移しでもなんでもする」


 と脅して食べさせるようになった。

 イヴは顔をしかめつつも、一週間も経てば慣れたのか、


「はいはい、うるせえ母親だよ」


 と言いながら、サンドイッチやサラダのクレープ、果物をすりおろしたジュースを口にするようになった。

 とはいえ忙しい時などは本当に食べないので、アルバートが手で食事を口元まで運んだことも少なからずあった。


「口を開けろ」

「あー」

「ひな鳥か……」


 アルバートは見ていられなくなり、つい目をそらしてしまった。その瞬間、指をかじられた。


「固い」

「あ、当たり前だろう! それは俺の指だ!」

「どおりで不味いわけだ」


 イヴは淡々と言って、手元の籠手に合う魔石を選んでいた。

 アルバートが指を見ると、わずかに歯の跡が残り、しっとりと濡れていた。その手を口元まで運びかけたとき、イヴが見上げていることに気づいた。


「っ、な、なんだ?」

「続き」

「続き!?」

「飯の続き」

「……ああ、そうだな」


 慌ててアルバートは続きをイヴに差し出した。イヴはまた食べながら、作業に戻った。


「次はチーズが入ったサンドイッチがいい。ああ、団長殿の指は入れなくていいぞ」

「そんなもの入れるか!」


 やけに機嫌のよさそうなイヴに、アルバートは顔を赤くして声を上げた。



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